改訂新版 世界大百科事典 「ウシケノリ」の意味・わかりやすい解説
ウシケノリ (牛毛海苔)
Bangia fuscopurpurea(Dillwyn)Lyngbye
高潮線付近の岩や杭の上などに冬季に群生する毛のように細い紅藻ウシケノリ科の海藻。体は紫褐色ないし黄褐色で,長さ5~10cmになる。幼体は円柱状の細胞が1列に連結してできているが,成体は柔組織状に細胞が並び,直径100μm以上の円柱状の体となる。細胞内にはウシケノリ科に特徴的な星状の葉緑体をもつ。生育は冬季で,晩冬から初春によく成熟して,卵細胞と精子をつくる。受精卵からできた果胞子は貝殻について発芽すると,これを穿孔して糸状にのび,ここで越夏して,秋に無性的に胞子をつくる。この胞子は成熟すると貝殻中から海中に放出され,岩などについてわれわれの見るウシケノリの体に生長する。東北地方ではベコノリの地方名で呼ばれる。この生活史の様式は,アサクサノリを含むアマノリ属のそれと基本的に同じであるが,アマノリ属が葉状であるのに対し,ウシケノリ属は円柱状であることで区別される。ウシケノリに似た種類に淡水産のタニウシケノリB.atropurpurea(Roth)Ag.がある。世界各地に広く分布し,とくに利用されることはない。
執筆者:千原 光雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報