改訂新版 世界大百科事典 「果胞子」の意味・わかりやすい解説
果胞子 (かほうし)
carpospore
造果胞子ともいう。紅藻植物において,有性生殖を経て形成される胞子を果胞子と呼び,無性的に生じる胞子(四分胞子,単胞子など)と区別する。卵細胞(紅藻植物の卵細胞を特に造果器carpogoniumという)が精子と合体して生じた接合子は配偶体内で発達して果胞子体carposporophyteとなる。この果胞子体が最終的に果胞子を生じるが,受精から果胞子形成までの過程はさまざまな型があり,紅藻植物を分類する場合の重要な特徴となる。
アマノリ属の果胞子は海底の貝殻に付着すると,その内部に穿入(せんにゆう)してコンコセリスconchocelisという糸状体を形成する。アサクサノリの養殖では,果胞子のこの性質を利用して,カキの貝殻などに穿入させて生じたコンコセリスを夏の間,陸上の施設で培養して増やす。そしてコンコセリスから生じる殻胞子を秋にひびに付着させて人工採苗を行う。
執筆者:北川 尚史
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報