色素体(読み)シキソタイ

デジタル大辞泉 「色素体」の意味・読み・例文・類語

しきそ‐たい【色素体】

植物細胞の中にある、色素を含有する小体。葉緑体、それに似た構造をもつ有色体白色体などがある。

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精選版 日本国語大辞典 「色素体」の意味・読み・例文・類語

しきそ‐たい【色素体】

  1. 〘 名詞 〙 植物の細胞の細胞質中にあって色素を含有する小体。色素の種類によって葉緑体・雑色体白色体などに分ける。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「色素体」の意味・わかりやすい解説

色素体
しきそたい

光合成を行う真核生物の細胞に特有の構造体で、プラスチドplastidともいい、内外2枚の単位膜からできている。その形態上、機能上の特徴から葉緑体、黄色体、エチオプラストプロプラスチド、白色体などに分けられる。葉緑体はクロロフィルをもって光合成を行っている細胞の色素体で、クロロフィルのほかにフィコキサンチンをもっているものは褐色体、フィコエリスリンをもっているものは紅色体とよばれることもある。いずれも内側の膜から形成されたチラコイドがたいへんよく発達している。

 葉緑体はクロロフィルのほか、補助色素としてカロチノイドを含んでいるが、なんらかの原因でクロロフィルが合成されず、あるいは分解されて、カロチノイドの色が目だつようになっているものを黄色体という。これはクロロフィルがないために光合成を行わず、チラコイドもほとんど消失している。黄色体は果実や花びらの黄色ないし赤橙(せきとう)色の目だつ組織の細胞に含まれている。黄色体は古くは有色体あるいは雑色体などとよばれたこともある。

 エチオプラストは、本来は光が当たって緑色になるはずのものが、光が当たらないためにクロロフィルの合成がおこらず、白色の状態にとどまっている細胞の色素体(もやしが好例)である。正常ならチラコイドになるはずの膜成分は細い管の塊(プロラメラ・ボディ)となっている。しかし、光が当たると急速にクロロフィルが形成されるとともにチラコイドが発達し、正常な葉緑体となる。

 プロプラスチドは、盛んに分裂を行っている細胞に含まれるクロロフィルをもたない色素体で、形が小さく、またチラコイドの発達が悪く、これ自体分裂を繰り返している。なお、少量のカロチノイドをもっている。この色素体はある種のホルモンや光が与えられると葉緑体になる可能性をもっている。デンプンの合成と窒素同化の作用がある。

 白色体はプロプラスチドとよく似ているが、カロチノイドをもたず、遺伝子レベルで葉緑体になる能力を失った色素体で、ホルモンや光を与えても葉緑体にはならない。デンプン合成と窒素同化を行っており、根や茎の内部などにみられる。これらの色素体は、ミトコンドリアと並んで少量ながら核とは別の遺伝子をもち、独自にタンパク質の合成を行う能力をもっている。

[佐藤七郎]

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改訂新版 世界大百科事典 「色素体」の意味・わかりやすい解説

色素体 (しきそたい)
plastid
chromatophore

緑色植物の細胞に含まれる葉緑体と,その類縁で色素を含むことで特徴づけられる細胞小器官の総称。動物細胞・菌類に欠けているが,分裂組織など未分化な植物細胞にみられ,大きさ1~3μmの桿(かん)状または長楕円体のクロロフィルをもたない原色素体proplastidから発達する細胞小器官である。その形状,内部構造,機能などは,種類によって著しく異なり,光合成器官になっている葉緑体のほか,クロロフィルを欠く白色体,黄化植物のエチオプラスト,大きな貯蔵デンプンをもつアミロプラスト,黄色や橙色細胞にみられる有色色素体,タンパク質の結晶を含むプロテノプラスト,大きな油滴や脂質顆粒(かりゆう)をもつオレオプラストなどがある。

 いずれの色素体も葉緑体でよく研究されているように,独自のDNA,RNAおよび酵素をもち,自己増殖性の細胞小器官として生殖細胞を通して次の世代に伝えられる。
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百科事典マイペディア 「色素体」の意味・わかりやすい解説

色素体【しきそたい】

植物細胞の細胞質内にある,色素を含むあるいは合成し得る小体。白色体,有色体(雑色体),葉緑体に分けられる。白色体は無色で色素をもたないが,光に当たると葉緑体に変わるもの,デンプン合成を行うもの(アミロプラスト)などがあり,分裂組織に近い部分,地下茎,根などに存在する。有色体はカロチン,キサントフィルなど葉緑素以外の色素を含み,一般に黄だいだい〜だいだい赤色。ニンジンの根,トマトの果実などでみられる。いずれの色素体も独自のDNA,RNA,酵素をもち,自己増殖能力をもち,細胞質遺伝をする。
→関連項目細胞質

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「色素体」の意味・わかりやすい解説

色素体
しきそたい
plastid; chromatophore

プラスチドともいう。植物細胞内にあり,色素を有するか色素を形成しうる小体。他の動物や菌類などの植物の細胞にはない。1細胞に1個または多数で,細胞質内に散在し,しばしば核の周囲に集り,また光の強弱によって位置を変える。大きさや外形は高等植物では,1~5μ の円板状か球形に近い形であるが,藻類などでは種によって特異的である。色素体が有する色素によって,葉緑体,有色体,白色体に分ける。また褐藻や紅藻細胞ではそれぞれ褐色体,紅色体と呼ぶこともある。普通,二分裂によって増殖するが,高等植物の胚的細胞では無色のプロプラスチド proplastid (前色素体) から一方向的に生長する。その内部構造の発達は小胞系から次第に層状のラメラ系に進み,最終段階でこれらは崩壊してオスミウム粒子を生じる。

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世界大百科事典(旧版)内の色素体の言及

【色素胞】より

…色素細胞の一種で,一般には体表にあって体色変化に関係する細胞をいう。色素胞は細胞の中心部から体表に沿って放射状にのびる樹枝状突起をもっている。細胞質内の色素顆粒(かりゆう)の種類により黒色素胞,赤色素胞,黄色素胞,白色素胞などに分類される。これらのうち黒色素胞の場合には,メラニン色素を含むメラノソームmelanosomeと呼ばれる黒色素顆粒が細胞の中心部にいっせいに凝集すると体色は白っぽくなる。一方,メラノソームが樹枝状突起の中へ拡散すると黒っぽくなる。…

※「色素体」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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