うどんこ病(読み)うどんこびょう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「うどんこ病」の意味・わかりやすい解説

うどんこ病
うどんこびょう

白渋(しらしぶ)病ともいい、植物の葉や茎の表面うどん粉をまいたように白いカビを生ずる病気で、子嚢(しのう)菌類に属するウドンコキン科のカビの寄生によっておこる。葉や茎の表面の白い粉状物は病原菌の菌糸および分生胞子で、大部分の菌糸は植物の組織の内部に侵入せず表面にまといついていて、吸器という特殊な器官宿主表皮細胞に入れて栄養をとる。生きている植物だけから養分をとり生育し、人工培養はできない。古くなると白色の病斑(びょうはん)は灰色に変わり、ところどころに0.1~0.2ミリメートル大の黒い小粒がみられるようになる。この黒い粒は有性生殖器官の子嚢殻で、内部に多くの子嚢を生ずる。

 形成される子嚢の数および子嚢殻の外部にみられる付属糸の形により種の分類がなされ、属によって寄生する植物の種類も異なる。おもな属にはエリシフェErysiphe(ムギ類、マメ類、ナス、キクなどに寄生する)、スフェロテカSphaerotheca(ウリ類、アズキバラ、コスモス、ヒャクニチソウなど)、ミクロスファエラMicrosphaera(シイノキなど)、ウンシヌラUncinula(ブドウ、クワ、サルスベリなど)、ポドスフェラPodosphaera(リンゴ、モモなど)、フィラクティニアPhyllactinia(カキ、クリなど)、レバイルラLeveillula(ピーマンなど)などがある。これらの属は、胞子の形や寄生性などによって、それぞれいくつかの種に分けられるが、種によってウリ類、マメ類など広い範囲に寄生するもの、限られた一、二の植物だけに寄生するものなどがある。

 伝染は、白い病斑上に無性的に生ずる分生胞子によって行われる。分生胞子は無色、楕円(だえん)形の単細胞で菌糸の上に鎖状に連なってできる。飛び散った胞子は、湿気があると発芽して植物を侵し広がる。一般に風通しの悪い畑、日陰、温室などに発生が多く、また、雨は少ないが湿度が高い天候が続くとよく発生する。

 防除法は、抵抗性品種を栽培し、剪定(せんてい)などによって通風をよくするほか、発病を認めた場合には薬剤を散布する。薬剤はDPC剤(「カラセン」)、キノキサリン系剤(「モレスタン」など)、イミノクダジンアシベル酸塩剤(「ベルクート」)、トリアジメキン剤(「バイレトン」)、トリフミゾール剤(「トリフミン」)、フェナリモル剤(「ルビゲン」)などのほか、硫黄(いおう)剤、炭酸水素ナトリウム剤などが有効である。

[梶原敏宏]

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改訂新版 世界大百科事典 「うどんこ病」の意味・わかりやすい解説

うどんこ病 (うどんこびょう)
powdery mildew

植物の葉や若い枝に,白い粉をまぶしたような症状を呈する病気。白渋病ともいう。オオムギコムギキュウリ,イチゴ,バラ,マサキ,カシなど多くの作物・樹木のほか,オオバコ,アキノノゲシなど雑草にも発生が見られる。それぞれの植物を侵すうどんこ病菌(ウドンコカビともいう)は別種であって,1種類の菌としては寄生範囲は狭い。うどんこ病が盛んにまんえんする時期には分生子によって空気伝染し,越冬・越夏には菌糸や子囊殻が働く。発病は通気不良のところに多い。防除薬剤としては硫黄剤がよい。
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子囊菌類,核菌類,ウドンコカビ科(ウドンコキン科,ウドンコビョウキン科ともいう)Erysiphaceaeを構成する一群のカビ。菌糸は葉の表面にのびてこぶ状の付着器でつき,そこから小枝を表面細胞内にさしこみ養分を吸収する。菌糸から短い分生子柄が直立し,先に数珠状につながった白い分生子がつくられ,そのため白粉状に見える。有性生殖をして黒い粒状の子囊殻ができる。子囊殻の外面には付属糸という枝ができ,その形や子囊の性質で分類される。代表的な属はErysiphePhyllactiniaSphaerothecaUncinulaなどで,絶対寄生性であるため人工培養には成功していない。
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百科事典マイペディア 「うどんこ病」の意味・わかりやすい解説

うどんこ(饂飩粉)病【うどんこびょう】

植物の葉や幼い枝の表面に,うどん粉をまき散らしたように見える病気。白渋病とも。子嚢菌類ウドンコカビ科の病原菌により発生。うどん粉のように見えるのは分生胞子で,その飛散によって病気が広がる。ムギ類,ウリ類,アズキ,ソバ,タバコ,モモ,ブドウ,バラ,マサキなど多くの植物を害する。防除は硫黄剤による。
→関連項目石灰硫黄合剤

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飼料作物病害図鑑 「うどんこ病」の解説

うどんこ病(オーチャードグラス)

関東以北で発生の多い重要病害。梅雨入り前から葉に白色〜灰色の綿毛状のかびが生えたような小さな病斑が現れる。病勢が進むと、植物体全体に白い粉をまいたような外観になる。この白い粉は分生子で、風雨で飛散してまん延する。雨が降ると白い粉が落ち、下から黄褐色で不定形の病斑が現れる。冷涼条件で発生し、特に曇天が続くなど日照が足りないときに多発する。病原菌のオーチャードグラスに対する分化型は日本で初めて発見された。

うどんこ病(アカクローバ)

特にアカクローバで発生が多い糸状菌病。1975年に北海道で初めて発生が報告されて以来急速に全国に広がった。春先から葉の表面に初めはあまり目立たな い、白い粉を撒いたような薄い菌叢を形成するが、菌叢は徐々に厚くなり、葉全体が覆われ枯死する。冷涼乾燥条件で多発し、曇天が続くなど日照が足りないと 被害が大きくなる。病原菌はアルサイククローバ、シロクローバ、ベッチなど広い範囲のマメ科牧草に寄生する。

うどんこ病(シロクローバ)

葉が白い粉を吹いたようになる糸状菌病。春先から葉の表面に初めはあまり目立たない、白い粉を撒いたような薄い菌叢を形成するが、菌叢は徐々に厚くなり、 葉全体が覆われ枯死する。冷涼乾燥条件で多発し、曇天が続くなど日照が足りないと被害が大きくなる。被害はアカクローバほどではない。病原菌はアカクロー バ、アルサイククローバ、ベッチなど広い範囲のマメ科牧草に寄生する。

うどんこ病(ライグラス)

1996年に宮崎県でイタリアンライグラスに発生した病害。4月から7月にかけて、葉身および葉鞘に発生し、初め表面に白色粉状の楕円形の菌叢を形成し、後に拡大して灰白色の菌叢となる。発生後期には病斑は相互に融合して不定形となり、植物体全体にうどんこを振りかけたような状態になる。病原菌はライグラス類に特異的な病原性を示す。

うどんこ病(ブルーグラス)

うどんこ病は、日本では芝草類としてはブルーグラスにのみ発生する。病斑は初め葉身上の白い絹糸状菌叢であるが、すぐに拡大して相互に融合する。病斑はこ のとき灰色に変わり、表面は粉状となる。寡照多湿条件で多発する。ターフとしては、広い範囲で白く薄汚れたような状態となる。病原菌は他のイネ科植物のも のとは、寄生性が異なる。

うどんこ病(クリムソンクローバ)

葉が白い粉を吹いたようになる糸状菌病。春先から葉の表面に初めはあまり目立たない、白い粉を撒いたような薄い菌叢を形成するが、菌叢は徐々に厚くなり、 葉全体が覆われ枯死する。冷涼乾燥条件で多発し、曇天が続くなど日照が足りないと被害が大きくなる。被害はアカクローバほどではない。病原菌は他のマメ科 作物にも寄生する。

うどんこ病(ライムギ)

地上部全体に白いかびを生じる。初め白色の菌叢を植物体上に生じ、これが直形5mm程度の楕円形病斑となり、うどんこを撒いたような様相となる。菌叢は後に灰色または淡褐色となり、植物体全体が黄化していく。病原菌は他の多くのイネ科植物のものと同種だが、寄生性が分化し、ライ麦にのみ寄生する。

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