日本大百科全書(ニッポニカ) 「サルスベリ」の意味・わかりやすい解説
サルスベリ
さるすべり
[学] Lagerstroemia indica L.
ミソハギ科(APG分類:ミソハギ科)の落葉高木で高さ5~10メートル。中国南部原産で、中国名は紫薇。樹皮は赤褐色、滑らかで薄くはげ、跡が帯褐白色の雲紋状になり、小枝は無毛で4稜(りょう)がある。葉は対生または互生し、コクサギ形の葉序になり、倒卵状楕円(だえん)形、長さ3~6センチメートルで縁(へり)に鋸歯(きょし)がない。7~9月、枝先の円錐(えんすい)花序に紅紫色、径3~4センチメートルの6弁の花を開く。花が白色のシロサルスベリ、淡紫色のウスムラサキサルスベリもある。花弁は円く、縮緬皺(ちりめんじわ)があり、基部に細長いつめがあり、萼(がく)は半球形で6中裂する。雄しべは多数で、そのうちの6本と雌しべ1本が長く突き出て巻曲する。果実は球形、径約7ミリメートルの蒴果(さくか)である。
サルスベリの名は樹皮が滑らかなのでサルも滑り落ちるとの意味であり、赤い花が長く咲き続けるのでヒャクジツコウ(百日紅)ともいわれる。日本には江戸時代に入っており、貝原益軒(かいばらえきけん)の『花譜』(元禄7=1694)に初めて百日紅の名が出てくる。日本に野生するヒメシャラ、ナツツバキ、リョウブなども樹皮が似ているのでサルスベリとよばれる。類似種のシマサルスベリL. subcostata Koehneは屋久島(やくしま)から沖縄、および中国に分布する。樹皮のはげた跡が白くなり、サルスベリの花より小さい径約1センチメートルの白色花が開き、小枝と花序に毛があるのでサルスベリと区別できる。また、屋久島、種子島(たねがしま)、奄美(あまみ)大島産のものはシマサルスベリの変種のヤクシマサルスベリである。
[小林義雄 2020年8月20日]
栽培
陽樹で、土地を選ばず、成長は速い。整枝、剪定(せんてい)に耐え、萌芽(ほうが)力が強く、病害虫も少ない。繁殖は実生(みしょう)、挿木による。庭園、公園、寺院などに植え、並木にもする。
[小林義雄 2020年8月20日]