改訂新版 世界大百科事典 「ヒャクニチソウ」の意味・わかりやすい解説
ヒャクニチソウ (百日草)
youth-and-old-age
Zinnia elegans Jacq.
夏の長い間,美しい花を咲かせつづけるキク科の一年草。ヒャクニチソウ(ジニア)属Zinniaの植物は主としてメキシコに約15種が分布するが,本種は最も大輪で,1862年(文久2)以前にアメリカから渡来したといわれ,チョウキュウソウ(長久草)と呼ばれていた。ウラシマソウ(浦島草)の名もある。現在栽培されている園芸品種は,1856年フランスで八重咲きが出たのをはじめとして,アメリカで大輪系に改良が進み,世界各国で夏花壇の花として発達した。基本変種は長卵形の葉を対生し,茎頂に総苞につつまれた頭状花を単生するが,舌状花にはめしべだけしかなく,管状花にはおしべとめしべがある。改良種の花型には大・中・小輪の別があるばかりでなく,万重咲き(ダリア咲き),マツムシソウ咲き(スカビオサ咲き),ねじれ咲き(ファンタジー咲き)などがある。花色には紅色,オレンジ色,黄色,クリーム色,白色,藤色,紫色などのほか,斑点や条線の入るものなどがある。また,従来の大輪品種は高性であったが,鉢植え,プランター,花壇用として矮性(わいせい)品種も多くなっている。植物体はニコチンを主成分としたアルカロイドを含有している。栽培は直まき法,移植法いずれでもよいが,たねは4月,地温の上昇したころにまく。秋には雨と気温の低下で葉に角斑病が出やすいので,硫黄剤で防除する。八重咲きのたねをとるには一番花が八重咲きのものだけを選んで残し,花心から出る花粉が八重咲きの舌状花につくようにする。一重咲きが残存すると,たとえ八重咲きからたねをとっても一重咲きが出やすい。
別種のメキシコヒャクニチソウZ.angstifolia HBK.(=Z.haageana Regel)は葉が細く,改良品種の舌状花は複色で彩りが渋く,矮性で花壇用として優れている。またホソバヒャクニチソウZ.linearis Benthは,葉が線状で橙黄色の小花を夏から秋にかけてたくさん開く。小型で矮性であるから鉢植え,花壇用に適している。
執筆者:浅山 英一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報