改訂新版 世界大百科事典 「エビゴケ」の意味・わかりやすい解説
エビゴケ
Bryoxiphium norvegicum(Brid.)Mitt.
エビゴケ科の蘚類。北アメリカと東アジアに隔離分布するが,両地域の個体群は亜種で区別されている。東アジア産の亜種はシベリアからインドネシアにかけて広く分布するが,日本ではとくに火山地域に多い。陰湿な場所の岩壁に群生し,つやのある大きなマットをつくる。茎は長さ1~3cmで,多数の葉を規則正しく2列につける。葉は披針形で,中央脈が背部に偏在し,腹部は2片に分かれて茎を強く抱く。このため,葉はエビの甲殻に似ている。また,茎の上部の葉および雌苞葉の中央脈がひげのように長く突出して,エビの触角を思わせるので,エビゴケという名がつけられた。北アメリカ産の亜種は,現在の分布が過去に氷河におおわれなかった地域にほぼ限られているため,氷期以前の古い遺存種であると考えられている。アメリカではこの種をsword mossと呼ぶ。
執筆者:北川 尚史
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報