日本大百科全書(ニッポニカ) 「ホアキン」の意味・わかりやすい解説
ホアキン
ほあきん
Nick Joaquin
(1917―2004)
フィリピンのジャーナリスト、作家。1950年代から英語作家として活躍した。英語雑誌のスタッフライターとして、キハノ・デ・マニラQuijano de Manilaのペンネームを用い、数多くの書評、ルポルタージュを書き、ジャーナリズムを文学のレベルにまで高めたと評価される。詩、戯曲、小説の執筆は実名のニック・ホアキンを用いた。その代表作、小説『二つのヘソを持つ女』(1961)はスペイン統治期の年代記、伝承などから着想を得、植民者文化の影響と、民族の歴史、伝統との相克に苦悩する、西欧化したフィリピン・インテリのアイデンティティ(主体性)の問題を扱っており、戯曲『一フィリピン芸術家の肖像画』(1952)とともに芸術性が高く買われている。ほかに短編『名誉ある兵士』(1949)、短編集『トロピカル・ゴシィク』(1972)や『洞穴と影』(1983)など。1973年国家芸術賞を受ける。
[山下美知子・菅家健一]
『山本まつよ訳『二つのヘソを持つ女』(1988・めこん)』