日本大百科全書(ニッポニカ) 「えんぶり」の意味・わかりやすい解説
えんぶり
福島、山形、宮城、岩手、青森の奥羽5県に伝わる正月の祝福芸の田植踊の一種。えんぶりとは、田の代(しろ)をならす用具の朳(えぶり)のことで、その作業の表現を中心にした命名であり、とくに青森県八戸(はちのへ)市を中心に三戸(さんのへ)郡、岩手県北上市、九戸(くのへ)郡方面に伝承している。八戸では、村々でえんぶり組をつくり、正月15日に領主から旦那衆(だんなしゅう)の家々を回って演じていたが、いまは2月17日の早朝に新羅(しんら)神社に参集し、20日まで市中の家々を回って演じている。頭役(かしらやく)の藤九郎(とうくろう)ほか4人の烏帽子(えぼし)をかぶった大夫(たゆう)を主体に、笛、太鼓、銅拍子(どうびょうし)で囃(はや)し、田植のえぶりさしの技のほか、えびす舞、大黒舞(だいこくまい)、万歳を演じる。えんぶり組は明治初期には120組もあったが、いまは約30組に減少している。八戸のえんぶりは国の重要無形民俗文化財に指定されている。
[新井恒易]