オオバンヒザラガイ(英語表記)Cryptochiton stelleri

改訂新版 世界大百科事典 「オオバンヒザラガイ」の意味・わかりやすい解説

オオバンヒザラガイ (大判石鼈貝)
Cryptochiton stelleri

背上に殻がまったく見えないヒザラガイ綱オオバンヒザラガイ科の軟体動物。殻の長さ20cm,幅10cm,膨らみ2cmくらいで,最大のものでは長さ43cmにも達する大型種。背上はがさがさしたビロード様の外套(がいとう)で覆われて,前後に並ぶ胡蝶(こちよう)形の白い殻はその下に隠れている。この殻を北海道の観光地ではコチョウガイの名で売っている。下面は黄橙色の広い足で,これで岩に付着して緩やかにはう。足と外套の間のくぼみに多くのえらがある。また足の前には頭があり,その口の歯舌で岩上の藻類を食べる。産卵期は春。北海道以北,アラスカよりアメリカ西海岸カリフォルニアに及ぶ。寒流域に分布し,潮間帯より水深600mに及ぶが浅いところに多い。アイヌ語でムイといい,エゾアワビと争い戦って,エゾアワビを敗走させたので,ムイ岬(恵山岬)より北にはエゾアワビが分布しないという民話がある。外套膜の表面の粗い皮をそぎ落として白い肉を食用にするが固い。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オオバンヒザラガイ」の意味・わかりやすい解説

オオバンヒザラガイ
Cryptochiton stelleri; giant Pacific chiton

軟体動物門多板綱ケハダヒザラガイ科。体長 20cm,体幅 10cmであるが,老成すると体長 30cmに及び,ヒザラガイ類中の世界最大種。体は小判形背面が多少ふくらむ。表面全体が肉帯でおおわれ,多くの小さな乳頭があり,紫褐色や灰白色などの斑点が散在する。足は平らで大きく,体幅の半分を占める。鰓は外套腔に約 75対ある。殻は白色,蝶形で8個並ぶが,肉帯の中に完全に埋まっている。寒流系の貝で,北海道以北,ベーリング海よりアメリカ,カリフォルニアに及んで分布し,潮間帯より水深 40mの岩礁にすむ。肉は食用。アイヌ名でムイともいう。これは昔,アワビとムイとが争ってアワビが負けて逃げ,津軽海峡の北海道側武井ノ島 (むいのしま) より北にはアワビがすまずにムイがいるという分布状態を説明する民話による。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「オオバンヒザラガイ」の意味・わかりやすい解説

オオバンヒザラガイ
おおばんひざらがい / 大判石鼈貝
giant Pacific chiton
[学] Cryptochiton stelleri

軟体動物門多板綱オオバンヒザラガイ科のヒザラガイ。北海道東部以北、アラスカを経てカリフォルニア沿岸まで分布する。大形種で、体長30センチメートル、体幅15センチメートルにも達する。アイヌ語ではムイとよばれる。

[奥谷喬司]


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世界大百科事典(旧版)内のオオバンヒザラガイの言及

【ヒザラガイ(石鼈貝)】より

…殻は通常重なり,前後端の殻は半円形で,中間の6枚は横長で山形に膨れる。種類によってはババガセのように後方へ片寄った種,ケムシヒザラガイのように殻が小さく離れている種,オオバンヒザラガイのように殻が肉帯でおおわれ外に現れない種などがある。殻のまわりの肉帯は通常小鱗や小棘(しようきよく)が密生している。…

※「オオバンヒザラガイ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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