シェークスピアの悲劇《オセロー》に基づいて作曲されたオペラ。イタリア語の台本による。
(1)ロッシーニがベリオ伯の台本に作曲,1816年12月4日ナポリのフォンド劇場で初演した3幕のオペラ。全曲を通じて舞台はベネチアで進行,シェークスピアやベルディの作品にみられるキプロスやハンカチーフの場面は現れない。喜歌劇にすぐれた作品を多く残したロッシーニの,シリアスな面を代表する傑作として音楽的にも高い評価を受け,一時期愛好されたが,ベルディの作品が現れるに及んで,その地位を譲った。
(2)ベルディが,作曲家でもあったA.ボーイトの台本に,7年の歳月をかけて作曲した4幕のオペラ。初演は1887年2月5日ミラノ・スカラ座(日本初演は1925年3月イタリア・カーピ歌劇団による。日本人による初演は53年10月二期会による)。シェークスピアの原作にある第1幕ベネチアの場面は前史的に扱われて省略され,第2幕以降キプロスでの物語を忠実に追って構成されている。ベルディはオテロの役を当時の大テノール歌手タマーニョFrancesco Tamagno(1851-1905)にあてて作曲したため,強い声の響きを持った歌手でなくてはこの役はつとまらず,上演は制約されるが,強大な表現力,説得力を持った音楽と劇的構成の巧妙さから,ベルディ最大の傑作として愛好されている。
物語の舞台は15世紀ベネチア領のキプロス島。ベネチアの貴族の娘デズデモナと結婚,キプロス島の新総督として着任したベネチアの将軍,黒人のオテロは,サラセン軍の船を撃退,勇躍凱旋するが,後輩の若いカッシオの出世に恨みを抱いた腹黒い旗手ヤーゴの奸計にあって妻とカッシオの仲を疑い,嫉妬のあまり彼女を絞殺するが,誤解と知って自害する。
執筆者:武石 英夫
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