改訂新版 世界大百科事典 「オリヅルラン」の意味・わかりやすい解説
オリヅルラン
Chlorophytum comosum (Thunb.) Jacq.
南アフリカ原産のユリ科の多年草。和名は,葉の間から出る匍匐(ほふく)枝の先につく子株の葉の姿が,折鶴に似るところから名づけられた。オリヅルランはランという名がついても,ラン科の植物ではない。つり鉢として観賞上,人気がある。葉は細長く濃緑で,短い茎の株もとから四方へ20~40枚が広がる。小さな白い花が長い花茎の先につき,春から夏にかけて咲くが,目だたない。葉間から匍匐枝を出し,その先端部に新苗をつけ,気根をのばし,盛んに栄養繁殖をする。根は肉質で太くちぎれやすい。一般に栽培されるのは斑(ふ)入りのオリヅルランの系統で,これには外斑といって葉に乳白色の斑が外側に入るもの(cv.Variegatum)と,内斑といって黄白色の斑が葉の中央部に入るもの(cv.Mandaianum)がある。
オリヅルラン属Chlorophytumは200種以上が熱帯域に広く分布し,とくにアフリカで分化している群である。そのうち栽植されるものに,葉が30~40cmと長くのび幅の広いもので,匍匐枝が出ないヒロハオリヅルランC.capense(L.)Vossがある。その系統に乳白の斑があざやかに入るフイリヒロハオリヅルランcv.Variegatumがある。ほかにも数種が観賞用にされ,肥大した根が食用にされるものもある。また葉が短くうすいものにシャムオリヅルランC.bichetiiがあり,白い斑が外側に入るほか小さな花も咲くが,これも匍匐枝は出ず,寒さにも少し弱い。
栽培は冬の間3~5℃を保てばよく,斑入りのものは半日陰くらいの場所がよい。根の生育が旺盛であるため,1~2年に一度は必ず植えかえるか株分けをする。繁殖はこのほか匍匐枝の先の子株を切り取り,鉢に植えてもよい。
執筆者:坂梨 一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報