オープン病院(読み)おーぷんびょういん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「オープン病院」の意味・わかりやすい解説

オープン病院
おーぷんびょういん

病院の施設・設備病床や検査機器など)を、地域の開業医などが利用できるように開放した病院。日本の医療制度上は「開放型病院」という。高額医療機器の共同利用や診療医師かかりつけ医)と病院医師との共同診療により、地域の医療資源の効率的活用や患者に対する医療の継続性の確保を促進しようとするものである。

 オープン・システム病院、オープンホスピタルともよばれ、アメリカに多い病院の形態である。アメリカの専門医は病院の勤務医ではなく、独自に開業している場合が多く、自分が契約している病院に患者を連れて行き、病院の病床や設備機器を使い、病院の常勤医師と共同で治療等を行う体制がとられることが多い。

 日本で診療報酬制度に開放型病院が最初に導入されたのは1978年(昭和53)である。もともとは医師会病院や公的病院を想定した制度であったが、その後、地域医療連携や地域医療支援の強化に取り組む民間病院にも拡大した。

 開放型病院においては、診療所で自らが診察した患者を入院させた医師(登録医)が、入院期間中に病院に行き、その患者に対し診療・指導等を行った場合には、患者1人1日につき1回の「開放型病院共同指導料(Ⅰ)」が登録医の診療所で算定できる。また「開放型病院共同指導料(Ⅱ)」が病院でも算定できる。

 開放型病院共同指導料に関するおもな施設基準としては、以下のような内容が定められている。

(1)当該病院の施設・設備の開放について、開放利用にかかわる地域の医師会等との合意(契約等)があり、かつ、病院の運営規定等にこれが明示されていること。

(2)当該二次医療圏内において、病院の開設者と直接雇用関係にない20以上の診療所の医師等が登録していること(登録医制度)、または当該地域の5割以上が登録していること等。

(3)開放病床(オープンベッド)はおおむね5床以上あること(開放型病床)。

(4)開放病床の利用および前記登録医と病院医師との共同診療などの実績があること等。

 開放型病院の仕組みには、医療資源の効率的活用や医療の継続性の確保だけでなく、開業医と病院医師の関係強化などのメリットもある。一方、共同診療に係る診療所医師の時間的制約、病院および診療所の両方に対する指導料の支払いが必要になることに伴う患者の経済的負担など課題もある。

 1997年(平成9)の医療法改正により導入された「地域医療支援病院」の承認要件には、「建物、設備、機器等を地域の医師等が利用できる体制の確保(開放型病床の設置・運営、医療機器の共同利用など)」があげられている。2019年(令和1)8月現在、厚生労働省の「特定機能病院及び地域医療支援病院のあり方に関する検討会」において、機能や役割の見直しが行われており、「地域医療構想(2015年4月より)」のもと、かかりつけ医等を支援する制度の充実が期待される。

[前田幸宏 2020年2月17日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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