日本大百科全書(ニッポニカ) 「お召」の意味・わかりやすい解説
お召
おめし
お召縮緬(ちりめん)の略称で、糸の段階で精練し、先染めしたのち織り上げた先染織物の代表的なもの。縮緬は、生地(きじ)に織り上げたのち精練するが、お召では、精練が織る前の糸の段階で行われるので、しぼの状態と風合いが異なってくる。お召とは、徳川11代将軍家斉(いえなり)のとき、西陣で織る縞(しま)縮緬がつくられ、これを将軍が召したことからよぶようになったという。これが各地へ波及し、桐生(きりゅう)でも天保(てんぽう)年間(1830~44)に織り出し、そのほか足利(あしかが)、八王子、十日町、米沢(よねざわ)などの各地においても撚糸(ねんし)技術の改良があって、お召の産地が形成されるに至った。
製織には、とくに緯糸(よこいと)にお召緯(ぬき)という特殊な強撚糸(きょうねんし)を使う。これは、緯糸の1メートル間に約300回ぐらいの下撚(したよ)りをかけ、精練と染色をしたのち、糊(のり)を固くつけ、さらに1メートル間に約1500回ぐらいの上(うわ)撚りをかける。右撚りと左撚りにした糸を、それぞれ二越(ふたこし)ずつ交互に緯糸として織り込む。そして、ぬるま湯につけて強くもんでしわ寄せをしたのち、乾燥してから湯のしをして、幅をそろえる。
各地で生産されたお召には撚りに特色があり、用途、種類とも多いし、またお召、お召風の名を使った織物の範囲も広い。代表的なものに、無地お召、駒(こま)撚りお召、壁お召、縞絣(しまがすり)お召、風通(ふうつう)お召、紋お召や、紬(つむぎ)糸を使った上代(じょうだい)お召、化合繊と交織したお召などがあり、種類が多い。これらは西陣(西陣お召)、桐生(桐生お召)、塩沢(塩沢お召)、十日町(十日町お召)などで生産され、一般に高級着尺地(きじゃくじ)、羽織地、帯地などに使われている。
[角山幸洋]