カガノビチ(読み)かがのびち(その他表記)Лазарь Моисеевич Каганович/Lazar' Moiseevich Kaganovich

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カガノビチ」の意味・わかりやすい解説

カガノビチ
かがのびち
Лазарь Моисеевич Каганович/Lazar' Moiseevich Kaganovich
(1893―1991)

ソ連政治家ウクライナキエフ(現、キーウ)近郊に生まれる。ユダヤ人。14歳から製靴工として働き、1911年ロシア社会民主労働党(のちの共産党)に入党。ウクライナを舞台に革命運動に携わる。1924年の第13回党大会で中央委員に選ばれ、1926年政治局員候補、1930年政治局員となる。1925~1928年にはウクライナ共産党第一書記を兼ねる。1930年代にはスターリン片腕として多くの部署辣腕(らつわん)を振るった。1930~1935年にはモスクワ市委員会第一書記として都市建設、地下鉄建設を指揮し、1933年には党中央委員会農業部長となって、農村の危機的状況に対して強硬な姿勢で臨んだ。さらには、破局的状態にあった鉄道運輸再建の任にあたるなど、つねに難局突破の重責を担った。1937年には重工業人民委員、1939年には燃料工業人民委員となる。第二次世界大戦中は国家防衛委員会のメンバーとしてカフカス方面の輸送を確保した。戦後の1947年ふたたびウクライナの第一書記となり、1953年には連邦第一副首相となる。1957年6月、マレンコフモロトフらとともにフルシチョフ追い落としを図って失敗し、「反党分子」として公職を追われた。以後政界から姿を消した。

[塩川伸明]

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改訂新版 世界大百科事典 「カガノビチ」の意味・わかりやすい解説

カガノビチ
Lazar' Moiseevich Kaganovich
生没年:1893-1991

ソ連邦のユダヤ人出身の政治家。典型的なスターリン派の党官僚。1911年からのボリシェビキであるが,内乱時,地方での集権的党運営が認められ,ネップ期は党中央委員会書記局においてスターリン書記長を補佐した。その後ウクライナ共産党書記をつとめ,30年に政治局員となる。特に1929年以後の農業集団化や右派批判に手腕をふるい,30年代はモスクワの都市建設および農業での強硬な指導によってスターリン政治体制の確立に貢献する。また重工業や運輸面でも活躍した。第2次大戦後はウクライナの党書記長をつとめたが,スターリンの死後,スターリン主義的な方法に固執,フルシチョフらと対立し,57年の反党事件で失脚。第22回党大会でも批判された。
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百科事典マイペディア 「カガノビチ」の意味・わかりやすい解説

カガノビチ

ソ連のユダヤ人出身の政治家,共産党指導者。1911年以来革命運動に参加十月革命で活躍。1930年政治局員となりスターリン政治体制確立に貢献し,重工業促進に参画する。1952年中央委員会幹部会員,1953年第一副首相となったが,スターリン死後はフルシチョフらと対立し,1957年反党グループとして解任された。
→関連項目ポドゴルヌイ

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