日本大百科全書(ニッポニカ) 「カラースキャナー」の意味・わかりやすい解説
カラースキャナー
からーすきゃなー
color scanner
エレクトロニクス技術を利用して、カラー原稿(カラーフィルムやその他の絵の原稿)から電気的な信号に変換された色分解情報を作成する装置。一般のプロセスカラー製版(多色写真製版)では、赤・緑・青の色光に分解されたデータをイエロー・マゼンタ・シアン・ブラックの4色のインキに変換して印刷する。
写真的に行われていた色分解を電子的に処理する技術が発達したのは1950年ごろからで、1970年代の後半にはカラースキャナーで電気信号に変換した情報を修正、加工できるシステムが商品化された。その後、プリプレス(製版工程)の作業は急速に電子化が進み、ほとんどの色分解作業はカラースキャナーで行われるようになった。商業印刷物の分野では、一般的にシリンダーとよばれる円筒状のドラムに原稿を装着し、高速でドラムを回転させながらスキャニング作業を行っていた。ドラムスキャナーは、フォトマルチプライヤーとよばれる高感度の光検出素子などを使用しており、色の分解能力が優れている。これらのカラースキャナーは、アメリカ、ドイツ、イギリス、日本などの各メーカーから商品化されていたが、当初は色分解した色光データの互換性に乏しかった。しかし1980年代になるとデータの標準化が進み、ドラム式のカラースキャナーをパーソナルコンピュータでコントロールできる技術が大幅に改良された。その後、CCD(charge-coupled device、電荷結合素子)とよばれるイメージセンサーを採用した高性能フラットベッド(平台形)スキャナーが製品化され、商業印刷物の分野で使用されるようになった。1990年代の中ごろにはフラットベッドスキャナーの低価格化が急速に進み、小型のカラースキャナーがパーソナルコンピュータの周辺機器として一般のオフィスや家庭でも使用されるようになった。個人向けのカラースキャナーで色分解されたデジタル画像データの修正や加工は、パーソナルコンピュータにインストールされた画像処理用の汎用(はんよう)ソフトで処理するが、この手法はプロセスカラー製版の工程でも一般的な画像処理方法として定着している。
[今井岳美]