カルテジアニスム(その他表記)Cartesianism

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カルテジアニスム」の意味・わかりやすい解説

カルテジアニスム
Cartesianism

デカルトの思考法もしくはその哲学の基本的原理をとる哲学的立場をいい,そうした思想家をカルテジアンという。したがって,デカルト哲学のどの面に注目するかによって,さまざまなカルテジアニスムがある。理性主義や方法としての厳密な批判的態度の意味でいわれるカルテジアニスムを除けば,いわゆる彼の二元論,なかんずく機械論的自然学と心身関係論がカルテジアニスム形成の核となった。 17世紀のカルテジアンに即していえば,自然学を継承した人としてオランダの H.レギウス,フランスの J.ロオー,P.レジスらがいる。しかしデカルトの自然学はその形而上学表裏一体をなすものであり,後者から切り離されれば唯物論に転化する傾向を含んでいた。そこで危険思想視されながら人々の思考様式に浸透していったデカルト哲学は,啓蒙期の唯物論の基盤となった。心身問題はデカルトの体系における最大の問題点をなすものであったが,そこから3つの方向が生れた。一つは偶因論であり,ドイツの J.クラウベルク,オランダの A.ゲーリンクス,フランスの L.ラ・フォルジュ,G.コルドモア,N.マルブランシュらが代表者である。第2は G.ライプニッツによる予定調和説であり,最後は B.スピノザの汎神論的一元論である。このうち,常に反デカルトを標榜したライプニッツはもちろん,自然学や幾何学的証明法でデカルトの影響を受けたスピノザ,デカルトへの忠実を表明していたマルブランシュも,それぞれにおけるカルテジアニスムの部分を指摘することはできても,その個性的な哲学の全体をカルテジアニスムと呼ぶことはできない。ほかに著名なカルテジアンとしては A.アルノーがおり,P.ニコルとの共著『ポール・ロワイヤルの論理学』第2版 (1664) は,デカルトの遺稿『精神指導の規則』の抜粋を付した。

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世界大百科事典(旧版)内のカルテジアニスムの言及

【フランス文学】より

…また,デカルトとパスカルの名前も,17世紀の文学史から逸することはできない。人間の思考する能力を重んじ,近代の合理主義的思想の基礎を築いたデカルトは,〈古典主義〉の理念の形成にも貢献していると思われるが,同時代への寄与もさることながら,むしろ18世紀以降,理性と良識を中核とする人間の本性の尊重という面において,〈カルテジアニスム(デカルト主義)〉は文学にも大きな影響を投げかけつづける。パスカルのほうは,近代的な実存の不安を鋭く感じとった先駆者として,19世紀以後の文学者の深い関心を呼ぶことが少なくない。…

※「カルテジアニスム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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