ライプニッツの形而上学思想の核心をなす考え方。ライプニッツは〈モナドロジー〉の立場から,神により創造された諸実体の間の直接的相互作用を否定するが,それにもかかわらず世界を構成する諸実体のはたらきが,互いに厳密に対応しあい,全体としてよく調和しているとした。そのために,また問題をより限定すれば,デカルト以来の心身関係についての困難を解決するために,現実的世界の創造に先立つ神の可能的世界の構想のうちに,諸実体の間の調和があらかじめ定められており,それにもとづいて創造された世界の事物の間に予定された調和の関係が実現されることを説いた。ライプニッツは時計の比喩によって予定調和を説明した。二つの時計の指針が互いに厳密に合致するのは,(1)直接的影響によってか,(2)時計職人がそのつど手を加えることによってか,(3)二つの時計の機構を,つねに完全に合致しうるように,職人があらかじめ精密に組み立てたかのいずれかである。ライプニッツは(1)の〈通俗哲学〉の道,(2)の〈機会原因〉の体系を退け,(3)の〈予定調和〉の説をもっとも理性にかなうものとみなしたのである。
→モナド
執筆者:増永 洋三
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…しかしおのおののモナドは相互に他から独立であり,モナドはそこから物が入ったり出たりする〈窓〉をもたない(無窓説)。モナドの作用は自己の内的原理のみにもとづいて展開され,モナド相互の間には予定調和の原理に従う観念的関係しか存しない。ライプニッツによれば宇宙においていっさいは生命的はたらきによってみたされており,物質のどのような微細な部分にも生命がある。…
※「予定調和」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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