予定調和
よていちょうわ
harmonie préétablie; preestablished harmony
ドイツの哲学者ライプニッツの形而上学的根本原理の一つ。彼の実体概念であるモナドは相互に影響し合うことはなく,因果関係は見かけにすぎない。たとえばAが語った言葉をBが理解するのは,A,B,2つのモナドのそれぞれの内的変化があらかじめ神によってしかるべく定められているからであると説明される。全歴史を通じ,全世界のモナドの変化の過程を,あたかも直接的相互関係があるかのように支配しているこの原理が予定調和である。それが典型的に適用されるのは心身問題で (精神と肉体が別々のモナドになる) ,デカルトによって残されたこの課題について,ライプニッツはこの考えを偶因論よりも優位とした。
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デジタル大辞泉
「予定調和」の意味・読み・例文・類語
よてい‐ちょうわ〔‐テウワ〕【予定調和】
1 ライプニッツの哲学で、宇宙は互いに独立したモナドからなり、宇宙が統一的な秩序状態にあるのは、神によってモナド間に調和関係が生じるようにあらかじめ定められているからであるという学説。→モナド論
2 (日本社会で)小説・映画・演劇・経済・政治等広い範囲で、観衆・民衆・関係者等の予想する流れに沿って事態が動き、結果も予想通りであることをいう。「勧善懲悪の予定調和を破った時代小説」「予定調和の法案成立」
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予定調和【よていちょうわ】
ライプニッツの哲学説の根本原理。相互に独立で各自の内的法則によって自己発展する各モナド(単子)が相互に対応し,世界の秩序が保たれるのは,神が各モナド間にあらかじめ定めておいた調和によるとする説。この説によって〈通俗哲学〉と〈機会原因〉の道を斥け,機械論と目的論との対立の克服を目ざした。
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よてい‐ちょうわ ‥テウワ【予定調和】
〘名〙 ライプニッツ哲学で、世界は互いに窓をもたない独立の単子(モナド)からなるが、これらの独立の単子が相互に関係づけられるように、世界の秩序は、あらかじめ神によって定められているとする説。〔西洋哲学史要(1901)〕
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よていちょうわ【予定調和 harmonie préétablie[フランス]】
ライプニッツの形而上学思想の核心をなす考え方。ライプニッツは〈モナドロジー〉の立場から,神により創造された諸実体の間の直接的相互作用を否定するが,それにもかかわらず世界を構成する諸実体のはたらきが,互いに厳密に対応しあい,全体としてよく調和しているとした。そのために,また問題をより限定すれば,デカルト以来の心身関係についての困難を解決するために,現実的世界の創造に先立つ神の可能的世界の構想のうちに,諸実体の間の調和があらかじめ定められており,それにもとづいて創造された世界の事物の間に予定された調和の関係が実現されることを説いた。
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世界大百科事典内の予定調和の言及
【モナド】より
…しかしおのおののモナドは相互に他から独立であり,モナドはそこから物が入ったり出たりする〈窓〉をもたない(無窓説)。モナドの作用は自己の内的原理のみにもとづいて展開され,モナド相互の間には予定調和の原理に従う観念的関係しか存しない。ライプニッツによれば宇宙においていっさいは生命的はたらきによってみたされており,物質のどのような微細な部分にも生命がある。…
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