ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 の解説
カーブース・ビン・サイード
Qaboos bin Said
[没]2020.1.10. マスカット
オマーンのスルタン(国王。在位 1970~2020)。ブー・サイード朝の一員としてイギリスのサフォーク県ベリーセントエドマンズで教育を受け,その後バークシャー県のサンドハースト陸軍士官学校で学んだ。1965年帰国し,父でスルタンのサイード・ビン・タイムールによって幽閉されたが,1970年にイギリスの支援を得て国王を追放し,スルタンの座についた。カーブースはただちに道路や病院,学校,通信システム,工業・港湾施設の整備に着手するなど野心的な国家近代化計画に着手した。また,道徳主義的な法律を廃し,閣僚会議(内閣)と諮問議会を設置するなど新たな政治体制をしいた。1996年の初の憲法で国王の絶対権力が規定されたが,2003年に女性を含む 21歳以上のオマーン全市民に選挙権を与えた。一方で政治集会や無許可の集会,政党の結成は禁止し続けた。外交面では孤立を避けるため近隣諸国と国交を結び,アラブ連盟や国際連合に加盟した。1981年には湾岸協力会議 GCCの創設メンバーとなった。政治的利害を問わず,イスラエル,イラン,サウジアラビアなどと良好な関係を維持し,イランの核開発問題やイエメン内戦,GCCによるカタール経済封鎖などの地域的問題に関しても中立的立場を貫いた。死後,遺言書により,いとこにあたるハイサム・ビン・ターリクが新スルタンに即位した。
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