ガイガー-ヌッタルの法則
ガイガーヌッタルノホウソク
Geiger-Nuttall's law
α粒子を放出する元素の寿命と,それから放出される粒子の飛程との間になんらかの関係が存在する可能性は,E. Rutherford(ラザフォード)によって1907年に示唆されていたが,それから4年後に,H. GeigerとJ.M. Nuttallによりその概略が明らかにされた.かれらは,空気中におけるα粒子の飛程の対数log Rを,対応する崩壊定数の対数log λに対してプロットすれば,多くの放射性元素について,各放射性系列ごとにほぼ直線関係が成立することを示した.いわゆる,ガイガー-ヌッタルの法則は次式のように表すことができる.
log λ = A + Blog R
ここに,λは飛程Rのα粒子を放出する放射性元素の崩壊定数,定数Bは直線の勾配であり,これは各系列において事実上等しく,Aの値は異なる.定性的には,λが大きいほど(つまり,平均寿命が短いほど)α粒子のエネルギーも大きいといえる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
ガイガー=ヌッタルの法則
ガイガー=ヌッタルのほうそく
Geiger-Nuttall's law
放射性崩壊系列に属する核種がα崩壊するとき崩壊定数λとα粒子が空気中で止るまでに走る距離 (飛程) R との間に関係式 log λ=A+B log R ( A ,B は各系列に固有な定数) が成立するという法則。 1911年 H.ガイガーと J.ヌッタルが発見した。この法則は G.ガモフ,E.U.コンドン,R.W.ガーニーらによりトンネル効果として説明された。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
ガイガー‐ヌッタルの法則【Geiger-Nuttall's law】
α 放射体の壊変定数の対数は,放出される α 粒子の飛程と線形関係にある.式で表すと
log λ=A log R+B
ここで λ は壊変定数[s-1],R は空気中での飛程[cm]とすると,
A=59.0
B=-41.8 ウラン系列 (質量数4n+2)
-43.4 トリウム系列 (質量数4n)
-45.0 アクチニウム系列 (質量数4n+3)
となる.
出典 朝倉書店法則の辞典について 情報
世界大百科事典(旧版)内のガイガー-ヌッタルの法則の言及
【α崩壊】より
…ビスマスより重い不安定な原子核の崩壊に多く見られ,とくに自然放射性崩壊系列はいくつかのα崩壊を含む。崩壊の速さは原子核によって異なり非常に広い範囲にわたっているが,崩壊定数λとα線の空気中の飛程Rとの間にはlogeλ=A+B logeR(A,Bは各放射性崩壊系列に固有の定数)という簡単な関係(ガイガー=ヌッタルの法則)がある。α崩壊の理論的説明は,G.ガモフ,E.U.コンドンとR.W.ガーニーによって,残りの核から受けるクーロンポテンシャルのもとでのα粒子の運動を量子力学的に解くことによってなされ(1928),これによればα崩壊は,α粒子がその波動性のためポテンシャル障壁を[トンネル効果]によって抜け出てくる過程と考えられる。…
【ガイガー】より
…ガイガーの行ったこれら一連の実験は,ラザフォードが原子模型を提唱(1911)する際の大きな力となったものである。11年α崩壊の崩壊定数とα粒子の飛程との間の関係を与えるガイガー=ヌッタルの法則を発見,翌年帰国した。13年β粒子(電子)検出用の尖端計数管を,28年には高感度の[ガイガー=ミュラー計数管]を発明,また宇宙線,人工放射能,核分裂生成物などの研究に実験物理学者としての才を発揮した。…
【放射性崩壊】より
…これがα粒子の放出である。理論計算を行うと,それまでなぞであった崩壊定数λと空気中のα線の飛程Rの関係が,各崩壊系列に固有の定数をA,Bとして,log eλ=A+B log eRで与えられるというガイガー=ヌッタルの法則を定性的に説明することができた。 鉛より原子番号の大きい元素ではα崩壊する核種が多いほか,中重核においても安定線から中性子の非常に少ないほうにはずれた核種には,α崩壊するものがみられる。…
※「ガイガー-ヌッタルの法則」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」