崩壊定数(読み)ホウカイテイスウ(英語表記)decay constant

デジタル大辞泉 「崩壊定数」の意味・読み・例文・類語

ほうかい‐ていすう〔ホウクワイ‐〕【崩壊定数】

放射性元素や不安定な素粒子などが崩壊をする際の、単位時間当たりの確率。崩壊定数をλ、半減期をT(秒)とすると、λ=loge2/Tとなり、逆比例関係で表される。壊変定数

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「崩壊定数」の意味・わかりやすい解説

崩壊定数
ほうかいていすう
decay constant

放射性物質または不安定な状態にある原子核粒子が崩壊する際の単位時間当りの確率を表す定数。安定でない状態にある原子核や粒子は、種々の粒子や、γ(ガンマ)線などの電磁波を放出して崩壊する。この崩壊は個々の原子核や粒子については偶然に支配される確率現象であるが、非常に多数の崩壊する同じ原子核の集まりや同じ粒子の集まりについては、単位時間に崩壊する割合λ(ラムダ)は一定の値となる。この値λを崩壊定数という。崩壊定数は崩壊する原子核や粒子の状態の種類一つ一つに対して固有な一定の値をもつ。たとえば、自然放射性原子核系列にあるポロニウム原子核210Poはα(アルファ)崩壊して鉛原子核206Pbにかわる。この210Poの崩壊定数は1秒当りの崩壊確率として、λ=5.8×10-8で与えられる。このような崩壊定数λは、放射性原子核に対してよく用いられている半減期T1/2とは、次の逆比例の関係式で結ばれている。T1/2=0.6931/λ(秒)。

[池田清美]

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改訂新版 世界大百科事典 「崩壊定数」の意味・わかりやすい解説

崩壊定数 (ほうかいていすう)
decay constant

放射性同位体放射性崩壊するとき,統計的に見ると,単位時間に起こる崩壊の数は同位体元素のその時点での原子核数に比例する。その比例係数を崩壊定数と呼び,通常λで表す。このことはまた,この原子核数が統計的には指数関数的にNt)=N0eλtと減少していくことを意味する。ここでNt)は時刻tで崩壊していない原子核数,N0t=0における原子核数である。したがって,崩壊に伴う放射線強度も同様な指数関数的に減少する時間変化をする。崩壊にいくつかの種類の過程がある場合には,個々の崩壊定数の和が全体の崩壊定数となる。崩壊定数の逆数平均寿命である。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「崩壊定数」の意味・わかりやすい解説

崩壊定数
ほうかいていすう
decay constant

放射性核種または不安定な素粒子の単位時間あたりの自然崩壊の確率。壊変定数ともいう。1種の崩壊過程のみをとるとき,時刻 0において N0個存在したこれらの核種または素粒子は時刻 t においては N0exp(-λt)に減少する。このλが崩壊定数である。また,これらの粒子が自然崩壊しないで生き残る時間の平均値を平均寿命といい,その値は崩壊定数の逆数に等しい。2種以上の崩壊過程をとりうるとき,各崩壊定数をλ1,λ2,…とすれば,全崩壊定数λは λ1+λ2+… となる。全崩壊定数に対しても前記の関係が成立する。またこのとき,各崩壊過程の起こる確率はそれぞれの崩壊定数の比 λ1:λ2:… に比例する。この比を分岐比という。

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百科事典マイペディア 「崩壊定数」の意味・わかりやすい解説

崩壊定数【ほうかいていすう】

放射性元素または素粒子が単位時間に崩壊する個数を存在する全数で割った割合。その同位元素または素粒子に固有な定数で,これをλとすると,時刻t=0でN(/0)個あった粒子は崩壊により時刻tにはN(/0)e(-/)(λ/)(t/)に減少する。半減期はlog(/e)2/λつまり0.693/λに等しい。
→関連項目ガイガー平均寿命放射能

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化学辞典 第2版 「崩壊定数」の解説

崩壊定数
ホウカイテイスウ
disintegration constant, decay constant

放射性核種が崩壊する場合には,その性質は核種に独特のもので,外的条件に依存しない.単位時間に崩壊する放射性核種の原子数は,存在する原子数にのみ比例し,この比例定数を崩壊定数という.壊変定数とよぶこともある.いま,時間tにおける原子数をNとしたとき,単位時間に崩壊する原子の数はλNで表される.ここで,λは崩壊定数である.放射性核種の量がはじめの量の半分に減るのに要する時間,すなわち半減期 T1/2 と崩壊定数の間には,

T1/2 = 0.69315/λ
の関係がある.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の崩壊定数の言及

【半減期】より

…崩壊に伴って,α線,β線,γ線などの放射線が放出されるが,その強度も半減期ごとに,1/2,1/4,1/8,と1/2ずつ減少していく。崩壊定数λとは,T1/2(loge2)/λ=0.693/λの関係にある。核分裂や核融合で多種の放射性同位体が同時に生成される場合,半減期の短いものは早くなくなり,長い半減期のものは後まで残ることになる。…

【放射性同位体】より

…軌道電子捕獲をβ崩壊に加える場合もある。 ある放射性同位体の,ある核種が単位時間に崩壊する確率は,その核種固有の定数であり,崩壊定数または壊変定数と呼ばれる。いまN個の放射性同位体が存在するとき,単位時間当りの崩壊の数(例えばdps(disintegration per second))はNに比例し,その比例定数が崩壊定数に等しい。…

※「崩壊定数」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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