ドイツの実験物理学者。ガイガー・カウンターの考案で知られる。インド学者ウィルヘルム・ガイガーWilhelm Geiger(1856―1943)を父にノイシュタットに生まれ、エルランゲン大学、ミュンヘン大学で物理学を学んだ。1906年イギリスのマンチェスター大学でシュスターの助手となり、翌1907年シュスターの後を継いだラザフォードの下にとどまり、α(アルファ)線散乱の実験に従事、優れた研究成果をあげた。とくにα粒子が気体分子と衝突して電離する作用を利用したα粒子の計数装置は、後のガイガー計数管(1908)やガイガー‐ミュラー計数管(1928)として知られるさまざまな荷電粒子の計数管に発展し、放射線計測学の基礎を築いた。またマースデンErnest Marsden(1889―1970)とともに行ったα粒子の大角散乱の存在を示す実験(1909)は、ラザフォードの原子構造の研究を基礎づけた。さらにヌッタルJohn Mitchell Nuttall(1890―1958)との共同実験では、α粒子の飛程と親原子の平均寿命を関係づける法則(ガイガー‐ヌッタルの法則)を導いた。
1912年帰国し、ベルリンの国立物理研究所に新設されたラジウム研究所の主任研究員となった。ここでボーテとともに、光の散乱で生じる反跳電子を測定して、光量子(光子)説を実験的に確かめた。第一次世界大戦に従軍したのち、1925年キール大学教授、1929年チュービンゲン大学教授となるが、ナチス政権が確立すると親英的研究者とみなされて、よいポストにつくことを妨げられたらしく、1936年から1944年まではベルリンの工業高等学校で教鞭(きょうべん)をとった。
[川合葉子]
ドイツの社会学者。1918年ウュルツブルク大学で法学博士号取得。1928年にブラウンシュワイク工科大学の員外教授として社会学を担当したが、1933年ナチスに追われデンマークに亡命、さらにスウェーデンに逃れた。第二次世界大戦後ふたたびデンマークに戻ったが、以後ドイツには帰らず、オーフス大学教授としてとどまった。1952年6月客員教授としてカナダのトロント大学での講義終了後、帰途船上で死去。
社会学の理論構成からすれば、形式社会学からは一定の距離を保ちつつ、「人間的結合およびこれから(あるいはこのものにおいて)生じた創造の研究」をもって社会学の課題とし、集団、人格的結合、群集および階層のごとき人間結合と実質的・形式的類型をその対象に設置した。集団の形式的類型にはテンニエスのゲマインシャフトとゲゼルシャフトを考えたが、あくまで集団形成の原理としてのみとらえ、方法論的には現象学的方法を採用しているのが特色である。亡命後の著作活動のなかでは、ワイマール民主主義の反省にたって『知識階級』(1944)を著したほか、在独中の『群集とその行動』(1926)によってル・ボンの『群集心理』(1895)を批判した成果を踏まえ、その延長線上で『るつぼの中の階級社会』(1951)を著すなど、学論以外にも貢献している。さらに論理実証主義的真理観に依拠して著した『イデオロギーと現実』(1953)のほか法社会学の研究など多方面にわたっている。
[鈴木幸寿]
ドイツの物理学者。ノイシュタットの生れ。ミュンヘン,エルランゲン両大学に学ぶ。1906年放電研究で学位を取得,同年渡英し,マンチェスター大学助手となる。翌年E.ラザフォードが教授として着任,08年α粒子を電気的に検出する計数管を共同製作,α粒子が2倍の電気素量をもつことを確定した。またガイガーは計数管内のα粒子のふるまいに思いつき,不確実だったα粒子の散乱現象を検証,09年α粒子が金箔によって大角度に散乱されることを発見,次いで翌年さまざまな物質についてα粒子の最確散乱角を決定した。ガイガーの行ったこれら一連の実験は,ラザフォードが原子模型を提唱(1911)する際の大きな力となったものである。11年α崩壊の崩壊定数とα粒子の飛程との間の関係を与えるガイガー=ヌッタルの法則を発見,翌年帰国した。13年β粒子(電子)検出用の尖端計数管を,28年には高感度のガイガー=ミュラー計数管を発明,また宇宙線,人工放射能,核分裂生成物などの研究に実験物理学者としての才を発揮した。
執筆者:兵藤 友博
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…気体の電離現象を利用した放射線検出器の一種で,GM計数管とも呼ばれる。1928年H.ガイガーとW.ミュラーが考案。いろいろの形状のものがあるが,通常,直径数cmの円筒状であり,管内には適当な気体(計数ガスと呼ばれる)がつめられている。…
※「ガイガー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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