ヒンドゥー教の神名。ガネーシャは〈(神々の)群(ガナ)の主〉という意味で,ガナパティGaṇapatiとも呼ばれる。シバ神とパールバティーPārvatīの息子とされる。彼は身体は人間であるが象面で,一牙を持つから,エーカダンタEkadanta(一牙を持つ者)と呼ばれる。また,あらゆる障害を取り除く力をそなえているとされ,ビグネーシュバラ(障害を除く主)とも呼ばれる。ネズミを乗物とする。彼は土俗神で,後代にシバ神話と関連づけられた新しい神であるが,古代の動物崇拝theriolatryのなごりと考えられる。彼に関する顕著な神話は大叙事詩《マハーバーラタ》や《ラーマーヤナ》にはみられず,また,今までのところ,5世紀以前につくられたガネーシャ像は発見されておらず,その信仰は6世紀前後に生じたとみなされる。しかし,後代,ガネーシャ信仰は急速に広まり,ヒンドゥー教のガーナパティヤ派の主神とされた。仏教,特に密教でも取り入れられ,大聖歓喜自在天(聖天(しようてん),歓喜天)となって,日本でも今日に至るまで民衆に信仰されている。
執筆者:上村 勝彦
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