サンスクリット名のナンディケシバラNandikeśvaraの漢訳名を大聖歓喜天といい,その略称。歓喜天,天尊などともいう。仏教では聖天を〈しょうでん〉と読む。大自在天(シバ神)と烏摩妃(うまひ)の子の俄那鉢底(がなぱち)(大将の意)のことで,大自在天の軍勢の大将であった。また毘那夜迦(びなやか)(障害を除去する者)ともいわれる。もとは人々の事業を妨害する魔王であり,インド神話におけるガネーシャ神に相当する。仏教に取り入れられてからは障害を排除する神となり,各種の修法においては聖天壇を設けて勧請されることが多い。形像は象頭人身像であって,単身像と双身像の2種がある。単身像は二臂(にひ),四臂,六臂,八臂,十二臂などの像が図像集に収められている。各手の持物については諸説がある。両界曼荼羅の外院には座像が描かれているが,単独に造像された例は多くない。双身像は一つの蓮華座の上に2像が抱き合う立像で,一方は魔王,他は十一面観音の化身の男女2天とされる。現存作例は彫像が多く,神奈川県宝戒寺の木彫像(鎌倉時代,重要文化財)が著名である。
執筆者:関口 正之
日本では聖天は夫婦和合をもたらす性神の面が強く表出している。双身の勧喜天像は,象頭人身の男女が立ったまま抱擁しているもので,互いに相手の右肩に顔面をのせている。この像から夫婦和合をはじめ子授けの霊験が説かれている。聖天に立願する者は,秘かに聖天供(しようでんぐ)を実修する。これは密教の秘法の一つで,本尊に,酒,大根,歓喜団(米粉をのばし,中へ小豆粉や串柿などを入れ包んだ菓子)を供える。とくに大根を用いるのは,性器を表現するものと思われる。民間信仰として栄え,奈良の生駒聖天(宝山寺)や東京浅草の待乳山(まつちやま)の聖天は,現代においても信仰の拠点として知られている。
執筆者:宮田 登
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…江戸初期の戒律復興宗学振興の気風をうけて密教を学び,戒律を修め,諸方を遍歴ののち,生駒山般若窟に入り一寺を開いて初め大聖無動寺と号した。不動明王,歓喜天(聖天)を安置し,不動護摩や聖天法などの修法を重ね,数多の法験を現した。みずからも仏像彫刻や仏画を手がけ,とくに不動明王の彫刻に秀作を残している。…
…彼女はヒマラヤの娘とされ,また,ウマー,ガウリー,ドゥルガーなどとも呼ばれ,血なまぐさい狂暴な姿をとるときは,カーリーと呼ばれる。軍神スカンダ(韋駄天)と象面のガネーシャ(聖天)は,シバとパールバティーの息子とされる。一方,ビシュヌは,すでに《リグ・ベーダ》に登場するが,元来,太陽の光照作用を神格化したものとみられる。…
※「聖天」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
働き手が自分の働きたい時間に合わせて短時間・単発の仕事に就くこと。「スポットワーク」とも呼ばれる。単発の仕事を請け負う働き方「ギグワーク」のうち、雇用契約を結んで働く形態を指す場合が多い。働き手と企...
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新