が‐な
[1] 〘終助〙 (願望を表わす
終助詞「が」に、
詠嘆の終
助詞「な」の付いてできたもの)
上代の「がも」に代わる中古以後の
用法で、「もがな」の形で用いられることが多い。
①
体言または体言に助詞の付いた形を受け、願望の意を表わす。…が(あって)ほしいなあ。
※
古今(905‐914)賀・三四七「かくしつつとにもかくにもながらへて君が
やちよにあふよしも哉〈
光孝天皇〉」
※
落窪(10C後)四「ただ
受領のよからんをがなとこそ思ひつるに」
※枕(10C終)三〇〇「さらん者がな、使はんとこそおぼゆれ」
※
源氏(1001‐14頃)若紫「見てもまた逢ふ夜まれなる夢のうちにやがてまぎるるわが身ともがな」
※
平家(13C前)九「あっぱれ、よからうかたきがな。最後のいくさしてみせ奉らん」
② 命令(禁止を含む)文を受け、第三者の動作の実現を願う意を表わす。
中世以後の用法。…(て)ほしいなあ。
※歌謡・
閑吟集(1518)「はしへまはれば人がしる、湊の川の塩がひけがな」
[2] 〘副助〙 (疑問の
係助詞「か」に詠嘆の終助詞「な」の付いてできたもの) 漠然とさし示すのに用いる。中世から
近世の用法。
① 疑問語を受け、不定の意を表わす。…か。
※
今昔(1120頃か)一六「何をがな
形見に嫗に取せむ」
※人情本・清談若緑(19C中)二「只此の上は何様(どう)がなして、日々の便(たつき)をするが肝要」
② 前の語を受け、漠然と例示する意を表わす。…でも。
※雲形本狂言・
塗師平六(室町末‐近世初)「おなつかしう存、
まぼろしにがな見えられた物
(もの)でござりませう」
※浄瑠璃・
心中重井筒(1707)中「いやそれは私寝言かな申たか。ただしお前が病
(や)みほふけて
空耳でかなござりましょ」
[3] (
感動の終助詞「が」に、同じく感動の終助詞「な」の付いたもの)
文末において終助詞的に用いられる。江戸後期から見られる。
※歌舞伎・傾城富士見る里(1701)二「ヤイ阿呆、伴右衛門様は吉原であらうがな」
② 感動を表わす。
※浄瑠璃・女殺油地獄(1721)下「抜き差しならぬ此二百匁、有所には有ふがな」
③ 見込みのうすい期待にこだわる気持を表わす。「来るといいんだがな」
がな
〘接尾〙 (語源未詳。「なか(中)」「なが(長)」の変化したものか) 多く「日がな一日」の形で用いられる。一日中の意。
※浄瑠璃・用明天皇職人鑑(1705)三「主に売ったる身と思へば、昼は日がな一日、手足のかわくひまもなく働けば働く程」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
デジタル大辞泉
「がな」の意味・読み・例文・類語
がな[副助・終助]
[副助]《係助詞「か」に終助詞「な」の付いた「かな」の音変化》体言・活用語の連用形、副詞・助詞などに付く。
1 (疑問語に付いて)不確かな物事を挙げ示す意を表す。さあて…か。
「今の分でも知れぬ(=今ノ勝負デモ勝チ負ケハワカラナイ)。何―勝負にさせう」〈虎明狂・伯養〉
2 不確かながらも例示する意を表す。…でも。…かなにか。
「てっきり口舌―なされて、ひそかに私は乗りかへて、様子を御覧なさるるであろうと存じます」〈浮・禁短気・五〉
[補説]中世から近世の用法。
[終助]《終助詞「が」+終助詞「な」》
1 体言、または体言に格助詞「を」「と」などを伴ったものに付く。願望を表す。…が(あって)ほしいなあ。…だったらよいのに。
「あっぱれ、よからうかたき―。最後のいくさして見せ奉らん」〈平家・九〉
2 (命令・禁止の意を表す文に付いて)強調する意を表す。
「湊の川の潮が引け―」〈閑吟集〉
3 活用語の連体形などに付く。確かめたい気持ちや、問いただしたい気持ちを込めた感動を表す。…だねえ。…だがなあ。…だよね。
「抜きさしならぬこの二百目。ある所にはあらう―」〈浄・油地獄〉
[補説]1は、多く「もがな」の形で用いられたが、中古中期ごろから「をがな」の形も現れた。「もがな」は「も‐がな」と意識され分離し、のち「がな」単独でも用いられた。2は、中世末ごろからの用法。3は、近世の用法で、多くは推量の意を表す語に付く。
が‐な[連語]
[連語]《接続助詞「が」+終助詞「な」》(文末に付き、終助詞的に用いて)実現性の薄い事柄をなんとか実現してほしいと願望する意を表す。「早く来てくれるといいんだがな」
[補説]多く「明日は晴れてほしいんだがなあ」のように「がなあ」の形で用いられる。
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