キエリテン(その他表記)yellow-throated marten
charsa
kharza[ロシア]
Martes flavigula

改訂新版 世界大百科事典 「キエリテン」の意味・わかりやすい解説

キエリテン
yellow-throated marten
charsa
kharza[ロシア]
Martes flavigula

大型で尾が長く,首が鮮やかな黄色の食肉目イタチ科の哺乳類。北はアムール,ウスリー地方,中国東北部,朝鮮半島から南は台湾,インドシナ,ジャワボルネオ,インド南部までの森林地帯にすむ。体長48~80cm,尾長37~45cm,体重2~3kg。他のテンより尾が長く,体長のほとんど2/3に達し,体の毛が荒い。体の背面黄褐色で後ろへしだいに黒くなり,腰と尾は黒褐色。のど,首,前胸はオレンジ色を帯びた黄色で,黒色の頭から首側に走る黒帯で縁取られ,きわめて美しい。地上でも行動するが,木登りが巧みで,リスのように木から木へ100mも跳躍するほか,高い木の上から半ば滑空しながら20~30mも先の地面に飛び下りることができる。他のテンと異なり純肉食性に近く,気が荒くジャコウジカなどの小型の有蹄(ゆうてい)類を家族群で追いかけてとらえ,主食とする。またウサギ,リス,ネズミ,鳥,昆虫なども食べる。初夏に交尾し翌春2~3子,ときに5子を生む。毛皮は質が悪い。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「キエリテン」の意味・わかりやすい解説

キエリテン
きえりてん
yellow-throated marten
[学] Martes flavigula

哺乳(ほにゅう)綱食肉目イタチ科の動物。東シベリアから中国東部、ジャワ、ボルネオ島などに分布する。体長60~70センチメートル、尾長45センチメートル。全体に黄褐色であるが、四肢、尾、顔は黒、のどから胸は淡褐色をしている。北方のものや冬毛はより明るい色となり、のどはレモン色である。森林にすみ、樹洞に巣をつくる。主食はリスであるが、ほかの哺乳類、小鳥や卵、昆虫なども食べるし、果実や蜂蜜(はちみつ)もとる。繁殖習性はよくわからないが、中国雲南省では5月に出産していた記録がある。毛皮は利用されるが、良質ではない。インド南部にいる類似種インドキエリテンM. gwatkinsiも同一種とする考えもある。

朝日 稔]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内のキエリテンの言及

【テン(貂)】より

…【今泉 吉晴】。。…

【テン(貂)】より

…体長38~58cm,尾長15~30cm,体重1~2.4kg。デンマーク,スペインからヒマラヤ,モンゴルにすむムナジロテンM.foina,西ヨーロッパからシベリアに分布するマツテンM.martes,アラスカからニューメキシコに分布するアメリカテンM.americana,キエリテンM.flavigula(イラスト)などがある。 テンM.melampusは,本州,四国,九州と朝鮮半島南西部に分布する。…

※「キエリテン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

ベートーベンの「第九」

「歓喜の歌」の合唱で知られ、聴力をほぼ失ったベートーベンが晩年に完成させた最後の交響曲。第4楽章にある合唱は人生の苦悩と喜び、全人類の兄弟愛をたたえたシラーの詩が基で欧州連合(EU)の歌にも指定され...

ベートーベンの「第九」の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android