日本大百科全書(ニッポニカ) 「ギボン」の意味・わかりやすい解説
ギボン(Edward Gibbon)
ぎぼん
Edward Gibbon
(1737―1794)
イギリスの歴史家。サリー県パトニー(現、大ロンドン県)に生まれる。幼少年時代は病弱で小学校にも十分通学できず、おもに読書にふけった。16歳になると健康を回復したので、オックスフォード大学のモードリン・カレッジに入学したが、大学教育になじめず、しかもこの期間にカトリックへ転向したので父の不興を被り、スイスのローザンヌのカルバン派牧師のもとに預けられた。そこで信仰と勉学の指導を受け、これが彼の知的形成の基礎となった。1757年クラッシールの牧師の娘と恋愛に陥ったが、父の反対で結婚できず、一生独身で終わった。1758年帰国し、ハンプシャーの父の田園の住宅で読書生活を送った。1761年フランス文で『文学研究論』を出版、1763年1月大陸旅行に出発、フランス、スイス、イタリアを回り、1765年帰国したときにはすでに大著『ローマ帝国衰亡史』The History of the Decline and Fall of the Roman Empireの構想がなっていた。同著は1776年2月に刊行され、彼は一躍、大歴史家としての名声を獲得、ついで1781年、第2、第3巻が出版された。他方、彼は1774年より下院議員に選出されていたが、1783年にはこれを辞してロンドンよりローザンヌに移り、著述に専念、1788年4月に『ローマ帝国衰亡史』の最後の3巻が公刊され、全6巻の大著を完成した。総合的な歴史把握を生彩に富む筆にのせた不朽の名著は、同時に帝国の衰亡の原因を「野蛮と宗教の勝利」に帰した啓蒙(けいもう)思想的見解を表明している。1794年1月16日死去。晩年の著作『自叙伝』は死後に出版された。
[秀村欣二]
ギボン(テナガザル)
ぎぼん
gibbon
哺乳(ほにゅう)綱霊長目ショウジョウ科テナガザル属に含まれる動物の総称。ギボンはテナガザルの英名。この属Hylobatesは小形類人猿lesser apesともよばれ、オランウータンとともにアジアの類人猿Asian apesを構成する。インドシナ半島から東南アジアの島々に分布する。
[伊谷純一郎]