イタリアの画家。ギルランダイヨは通称で、正式名はドメニコ・ディ・トムマーゾ・ビゴルディDomenico di Tommaso Bigordi。15世紀後期におけるフィレンツェきっての流行画家であった。その多作ぶりは当時のフィレンツェで彼の描いた祭壇画をもたない聖堂はほとんどないと、うわさされたほどであった。1475年にサン・ジミニャーノの教区聖堂サンタ・フィーニ礼拝堂の装飾を終えたのち、ルッカおよびピサの大聖堂の装飾にも参画し、さらに1480年にはフィレンツェのオニサンティ聖堂に『聖ヒエロニムス』と『最後の晩餐(ばんさん)』を描いた。1481~1482年には数人のフィレンツェの著名画家とともにローマに招かれ、バチカン宮システィナ礼拝堂に『キリストの復活』(現存せず)、『聖ペテロと聖アンデレの召命』を描いた。フィレンツェに帰ってからはパラッツォ・ベッキオの百合(ゆり)の門の装飾に関与し、また1485年には同市の名士フランチェスコ・サセッティFrancesco Sassetti(1421―1490)の依頼により、サンタ・トリニタ聖堂の同家礼拝堂にフレスコ画『聖フランチェスコの生涯』と祭壇画『牧者の礼拝』を描いた。さらに彼はジョバンニ・トルナブオーニGiovanni Tornabuoniの委嘱を受け、1489~1490年にサンタ・マリア・ノベッラ聖堂の聖歌隊席を囲む壁面に『聖母の生涯』および『洗礼者聖ヨハネの生涯』を描いている。前記『聖ヒエロニムス』や『老人と孫』(パリ、ルーブル美術館)などの作品にみられる極端な細部描写は、この画家とフランドル絵画との接触を示している。
[濱谷勝也]
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