翻訳|calling
神に召されて新しい使命につくことを意味するキリスト教用語。召命と訳される外国語vocatio(ラテン語),Beruf(ドイツ語),頭書の英語などは〈呼び出すこと〉を意味する。もともとは神に選ばれ,呼び出され,救われることを意味した。しかしまた,呼び出され,これまでとは違った新しい使命を与えられることをも意味した。そのため,とくに神に召され,教会の職務である牧師(司祭)職を与えられることを意味することが多くなった。牧師職に就くには,この神の召命について明瞭な確信を持つことが不可欠の前提となる。このように召命を受けるとは,伝道者となることを意味すると広く理解されている。しかし,宗教改革においてこの限定が批判され,すべての信仰者が神に召され,この世における務めを与えられるのだと強調された。ドイツ語の〈ベルーフ〉が,召命を意味するとともに職業をも意味すると理解されるのは,そのためである。すべての職業が神の召しによる聖なるものだと考えるのである。
執筆者:加藤 常昭
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
キリスト教で、神から召されて新しい使命を与えられることをいう。もともと「呼び出し」の意味をもつラテン語のvocatioは、神の召しとして、西欧中世のキリスト教会において聖職者になることの召しに限定されて理解され、用いられていた。16世紀の宗教改革者たちは、ルターをはじめカルバンも、この語を、すべてのキリスト者についてのものと理解し、強調するようになった。すべてのキリスト者は信仰と洗礼とにおいて神の召しを受け、世俗世界のなかでそれぞれの職業の生を通して神の召しにこたえるという、いわゆる「職業召命観」とよばれるものであって、信仰者をこの世界から隠遁(いんとん)させるのでなく、神からの使命をもって積極的にこの世に送り出し、働かせるという点で、近代精神にとっての大きな契機の一つとなった。職業生活に限らず、全生活を神の召しにおいてとらえるものであって、トレルチやM・ウェーバーの所説、とくに後者の『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』は著名。
[徳善義和]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…カイコガを例にとると,羽化後雌は腹部末端から分泌腺を突出させて性フェロモン(ボンビコール)を放出し始める。これをコーリングcallingという。コーリングを始めると,近くの雄はアンテナをたててフェロモンを感知し,翅をばたつかせながら渦巻き状に歩いて雌ガに近づく。…
…それが最もはっきり現れたのは,世俗的な職業についての考え方の変化である。中世のカトリック教会秩序のなかでは,聖職者が一般の俗人信徒とは別個の身分を形成しており,俗世を離れてひたすら信仰生活に専念する修道士にせよ,俗人信徒の救霊の任務をゆだねられた教区の司祭にせよ,聖職者のみが真の意味で神の〈召命〉を受け,神に直接奉仕する人間とみなされていた。しかし,ルターの唱えた〈万人祭司〉の原理は,このような狭い意味での〈召命〉観を根本から変化せしめ,上は君侯から下は手工業者や農民にいたるまで,あらゆる身分の人間が,社会におけるそれぞれの仕事ないし職業労働を通じて,聖職者と同様直接神に奉仕するものと考えられるようになった。…
※「召命」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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