日本大百科全書(ニッポニカ) 「クトノホラ石」の意味・わかりやすい解説
クトノホラ石
くとのほらせき
kutnohorite
カルシウム(Ca)とマンガン(Mn)の炭酸塩鉱物。原記載時にはチェコスロバキア(現、チェコ)の原産地名クトナ・ホラKutná Horaにちなんでクトナホラ石kutnahoriteと命名されたが、現在ではクトノホラ石となっている。苦灰石(ドロマイト)のマンガン置換体。方解石と菱(りょう)マンガン鉱の中間のマンガン方解石(Ca,Mn)[CO3]は、原子配列上カルシウムとマンガンの位置が一定せず、同質異像関係にある。クトノホラ石ではマンガンを置換してマグネシウム(Mg)あるいは鉄(Fe)が含まれるのがつねで、両者とも乏しいものはマンガン方解石構造になるものとされている。深~中熱水鉱脈鉱床やある種の接触交代鉱床(スカルン型鉱床)の脈石鉱物として産するが、日本では前者の例として長野県松本市波田(はた)地区の竜島(りゅうじま)鉱山(閉山)、後者の例として埼玉県大滝村(現、秩父(ちちぶ)市)秩父鉱山がある。マンガン方解石との区別は同質異像関係を確認するための慎重なX線粉末回折実験が必要である。
[加藤 昭 2016年3月18日]