日本大百科全書(ニッポニカ) 「スカルン型鉱床」の意味・わかりやすい解説
スカルン型鉱床
すかるんがたこうしょう
skarn-type ore deposit
石灰岩などの炭酸塩岩石が熱水交代作用を受けて生成した鉱床。スカルン鉱床ともいう。火成岩マグマが地殻中に貫入すると、周囲の地下水は加熱されて各種のイオンを多量に溶解できる熱水状態となる。石灰岩(おもな構成鉱物は方解石)にケイ酸を溶解した熱水が作用すると、
CaCO3(方解石)+H4SiO4(溶液)
―→ CaSiO3+2H2O+CO2
という反応がおきて、珪灰石(けいかいせき)からなる岩石が生成する。このような作用をスカルン化作用、生成した岩石をスカルンという。スカルンを特徴づける鉱物は珪灰石以外に、カルシウムを含むざくろ石と単斜輝石がある。スカルンが生成するとき二酸化炭素が発生して熱水に対する各種イオンの溶解度が低下する。このため、鉄、銅、亜鉛、タングステンなどの鉱物が沈殿して、これらの金属を含む鉱床が生成される。
スカルン型鉱床はしばしば貫入火成岩と石灰岩の境界に沿って発達していることから、接触交代鉱床とよばれる。また、400℃を超える高温生成の鉱物が多くみられることから高温交代鉱床ともよばれる。しかし、石灰岩と頁岩(けつがん)や緑色岩などの堆積(たいせき)岩との境界に沿っても多くの鉱床が存在し、また200℃以下で生成した鉱物を主とする鉱床もある。このため、鉱床がスカルンの生成と密接に関係していることから、一般的にスカルン型鉱床とよばれる。
[正路徹也]