家庭医学館 「クラミジア結膜炎」の解説
くらみじあけつまくえんとらこーま【クラミジア結膜炎(トラコーマ) Chlamydial Conjunctivitis】
クラミジア・トラコマチスという病原体の感染によっておこる結膜炎です。
クラミジアには、目に感染してトラコーマという重篤(じゅうとく)な結膜炎をおこす型と、泌尿生殖器(ひにょうせいしょくき)に感染し性感染症の原因となる型があります。
トラコーマは、一部の発展途上国ではいまだに失明(しつめい)の大きな原因になっていますが、日本ではほとんどみられなくなりました。しかし近年では、性感染症の原因となるクラミジアが、結膜に感染しておこるクラミジア結膜炎が多くなってきています。
性感染症のクラミジア感染症は、近年急速に増加し、性感染症の第1位を占めるに至り、それにつれて結膜炎も同様に増加してきました。性行為の際に感染するケースと、新生児の産道感染によるものとがあります。
[症状]
おとなの場合には、急性(きゅうせい)の濾胞性結膜炎(ろほうせいけつまくえん)(「結膜炎とは」の濾胞性結膜炎)をおこします。充血、めやに(眼脂(がんし))、眼痛、異物感など、流行性角結膜炎(「流行性角結膜炎」)と類似した症状をおこしますが、濾胞がより大型です。経過が長く、慢性化することもあります。
新生児の場合には、生後1~2週間で発症し、めやに、充血が生じ、偽膜(ぎまく)(炎症によって、結膜の表面にできる灰白色の膜のようなもの)を形成しやすく、瘢痕(はんこん)(きずあと)を残します。クラミジア肺炎をおこしやすいので、注意が必要です。
[検査と診断]
結膜擦過物(けつまくさっかぶつ)の検査などを行ない、病原体となっているクラミジアを確定することで、適切な治療ができるようになります。
2週間以上にわたって結膜炎が軽快しない場合には、このような検査が必要となります。
[治療]
クラミジアに有効なテトラサイクリン系などの抗生物質が使用されます。ぶり返しやすいので、徹底的に治療することがたいせつです。症状がよくなってからも、しばらくは治療を続ける必要があります。
クラミジア結膜炎と診断された場合には、感染源となった性感染症も十分に検査し、本人はもちろん家族やセックスパートナーの検査も必要です。