日本大百科全書(ニッポニカ) 「トラコーマ」の意味・わかりやすい解説
トラコーマ
とらこーま
trachoma
感染性の結膜疾患の一種で、トラホームTrachom(ドイツ語)ともいう。結膜に濾胞(ろほう)をつくり、慢性に経過する病気で、クラミジア・トラコーマティスChlamydia trachomatisという病原体の感染でおこる。かつてはもっとも患者の多い目の感染症であったが、衛生状態のよい先進国ではごくまれになった。濾胞は融合して大きくなり、結膜上皮細胞に病原体の集合体とみられる封入体(トラコーマ小体、プロワツェクProwazek小体)が検出される。角膜上方から混濁を伴って血管が侵入するが、この状態をパンヌスpannusという。結膜に瘢痕(はんこん)をつくり、その影響で涙液分泌低下、眼瞼(がんけん)内反、睫毛(しょうもう)(まつげ)乱生、涙道閉鎖、角膜潰瘍(かいよう)などの後遺症をおこす。このために視力が障害される。病原体に対してエリスロマイシン、テトラサイクリン系の抗生物質が有効である。両者とも主として軟膏(なんこう)が用いられる。
[内田幸男]