ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 の解説
クリスト&ジャンヌ=クロード
Christo and Jeanne-Claude
(妻)ジャンヌ=クロード Jeanne-Claude 1935.6.13. モロッコ,カサブランカ~2009.11.18. アメリカ合衆国,ニューヨーク,ニューヨーク
アメリカ合衆国の環境彫刻家夫妻。フルネーム Christo Javacheff, Jeanne-Claude de Guillebon。屋外の立体芸術作品,布やプラスチックを使った大がかりな作品で知られる。クリストはブルガリアに生まれた。ソフィア美術学校で学んだのち,短期間ウィーン美術学校に留学。1958年パリに移住し,肖像画を描いて生活しながら身のまわりの物体を布で梱包する作品に着手した。同年ジャンヌ=クロードに出会い,翌 1959年に結婚。ジャンヌ=クロードはフランス軍人の父のもとにモロッコで生まれた。チュニス大学でラテン語と哲学を学ぶ。結婚後,クリスト&ジャンヌ=クロードの名で活動する。初期の作品に,『埠頭のパッケージ』Dockside Packages(1961,ケルン),パリのビスコンティ通りをドラム缶で封鎖する『鉄のカーテン――ドラム缶の壁』Iron Curtain--Wall of Oil Drums(1962)。1964年ニューヨークに移住し,活躍の場を広げた。おもな作品に,コロラド渓谷での『バレー・カーテン』Valley Curtain(1972),布で覆った梱包芸術としてシドニー近郊の海岸線(1969),フロリダ州マイアミの『囲まれた島々』Surrounded Islands(1983),パリのポン・ヌフ(1985),ベルリンの国会議事堂(1995)など。1991年,茨城県とアメリカのカリフォルニア州に巨大な傘を並べるプロジェクトを展開。2005年にはニューヨークのセントラルパークの歩道にスチール製の門を 37kmにわたって並べ,布パネルで飾った『門』The Gatesを展示した。作品はいずれも短期間で除去されてしまうものであるため,印刷物やフィルムとなって残された。プロジェクトの規模が大きくなるに伴い,関係先の許認可,環境調査,建設計画等の見直しが必要となり,実現までに数年から数十年も要するようになった。アーカンソー川の川面を約 9.5kmにわたって銀色の布で覆う『オーバー・ザ・リバー』は準備に約 20年,法律上の議論に約 5年をかけたが,ドナルド・トランプ大統領の就任に抗議するクリストによって計画中止となった。(→現代美術)
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