石油、ガソリン、アルコールなどの貯蔵、輸送に用いられる円筒状の鋼製容器。ドラムは本来もっとも古い打楽器の一つであるが、転じて円筒状の容器をドラムとよぶようになった。ドラム缶には20リットル入りから400リットル入りまで種々の容量のものがある。
1930年代当時から急成長した自動車産業を背景に石油の消費量が急激に増加し始め、他方ストリップ・ミルの発達による安価な薄鋼板の多量生産と板材成形法の開発に基づいて、従来の木樽(きだる)にかわって薄鋼板を素材とするドラム缶が使用され始め、石油の貯蔵と輸送とに画期的な発展をもたらした。第二次世界大戦前は戦略上の理由から、戦後は石油化学工業の発達によってドラム缶の需要は急速に増大したが、近年、パイプライン、大型タンカーなど石油の輸送手段の新発展によって、石油の貯蔵、輸送におけるドラム缶の地位は低下している。
普通広く使用されている200リットル入りのドラム缶は厚さ1.6ミリメートルの軟鋼板を素材にしている。その製法は、薄鋼板をロールで円筒状に曲げ、円筒の剛性を高めるために、胴体の周囲に波付け機(エクスパンダー)で2本以上の膨らみをつけ、鋼板の端部を突き合わせ溶接、もしくは手動シーマー(縫取り機)で折り曲げ、重ね合わせて継ぎ合わせる。蓋(ふた)と底になる円板を円筒端部にプランジャーで巻き締めする。石油工業用には圧倒的に鋼板が使われているが、アルコールや食品工業にはステンレス鋼やアルミニウム合金が、また一部化学工業には亜鉛鉄板が素材として使われている。
[志村宗昭]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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