日本大百科全書(ニッポニカ) 「ケクロプス」の意味・わかりやすい解説
ケクロプス
けくろぷす
Kekrops
(1)アテナイ(アテネ)の伝説上初代の王。アッティカの大地から生まれ、下半身は蛇の姿をしていたとされる。アクタイオスの娘アグラウロスと結婚し、3人の娘パンドロソス、ヘルセ、アグラウロスと、息子エリシクトンをもうける。彼はアクタイオスの死後その後を継ぎ、そのためアッティカの地はケクロペイアとよばれるようになったが、息子が若死にしたため、王位はやがて市民のなかの有力者クラナオスに引き継がれた。在位中はアテナイ市をめぐるアテネとポセイドンの争いの審判役を務め、アテネの勝利と判定した。また一夫一婦制や葬礼の創始、文字の発明などの功績によって人類の恩恵者と目され、人身御供(ひとみごくう)の習慣を廃止した最初の人ともされる。
(2)アテナイ王。エレクテウスとプラクシテアの子。父の死後、その後継指名を任されたクストスにより、兄弟パンドロス、メティオンを差し置いて後継者に指名された。このため、クストスはパンドロスらにアテナイから追放されたという。そして彼はエウパラモスの娘メティアドゥサをめとって、一子パンディオンをもうけるが、父の後を継いだパンディオンは、のちに従兄弟(いとこ)たちの起こした内乱のためメガラへ逃れ、そこで王となった。
以上の2人のケクロプスはよく混同されるが、その明確な区別は不明である。
[丹下和彦]