ゲルろ過(読み)ゲルろか(英語表記)gel filtration

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ゲルろ過」の意味・わかりやすい解説

ゲルろ過
ゲルろか
gel filtration

ゲル浸透クロマトグラフィー gel permeation chromatographyともいう。分子を大きさに従って分取する分析方法の一つで,とりわけ蛋白質,核酸など高分子物質について,広く用いられる。原理としては,三次元の網目構造をもつゲル粒子を詰めたガラス円筒 (カラム) をつくり,この上端から少量の試料を通過させると,小型の分子はゲルの網目の内部までもぐり込むので行程が長くて,遅れてカラム下端から溶出し,これに対して大型の分子は網目内に入らず,粒子の間隙のみをすり抜けてくるので,溶出が早いことによる。溶出順序は単なる分子量や分子の体積のみによるのでなく,細長い形状をしていて回転半径 (ストークス半径) の大きい分子は,ゲル内部に入りにくいので,同じ分子量で球形の分子よりも早く溶出する。ゲルは多糖類 (デキストラン) などを材料とすることが多く,この材料物質に対して吸着力のある物質の分子は,溶出が著しく遅れる。これらの例外にもかかわらず,多くの物質については分子量の順序に分離して溶出し,操作が簡便なので,分子量の推定や成分の分析,試料の調製に用いられる。用いられるゲルの製品は,開発者であるスウェーデン,ファルマシア社のセファデクスやセファロースが代表的であるが,バイオゲルなど他社の製品も用いられる。分析する分子量の範囲に応じて,ゲルには各種の規格がある。

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