デキストラン(読み)できすとらん(英語表記)dextran

翻訳|dextran

日本大百科全書(ニッポニカ) 「デキストラン」の意味・わかりやすい解説

デキストラン
できすとらん
dextran

D-グルコース重合体で、多糖類の一種。ある種の細菌ショ糖だけを含む培養液で育てると、デキストランが合成される。分子量は、天然の状態では400万にもなる。構造はデンプングリコーゲンとよく似ており、D-グルコースがα-1・6結合で直鎖状につながり、ところどころにα-1・4結合で枝分れしている。これは、デンプンやグリコーゲンがα-1・4結合をしていて、枝分れの点がα-1・6結合であることと対照的である。ほかにα-1・2結合やα-1・3結合の存在も知られているが、これらの量や種類はデキストランの起源によって異なる。

 デキストランはシロップ剤などの原料にされるほか、酸で部分的に加水分解したものは血漿(けっしょう)増量剤として知られる。日本薬局方には分子量7万5000の高分子デキストラン(デキストラン70)と分子量4万の低分子デキストラン(デキストラン40)の2種類が収載されている。

村松 喬・幸保文治]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「デキストラン」の意味・わかりやすい解説

デキストラン
dextran

D-グルコースの重合多糖類。ショ糖液で細菌 Leuconostoc mesenteroidesL. dextranicumを培養すると,培養液中に蓄積される。これらの細菌がもつ酵素がショ糖を分解し,果糖 (D-フルクトース) を養分とし,残基のD-グルコースのほうを重合させる。グルコース間の結合は,全体としては分岐構造となっているので,種々の分子量の違った物質をふるい分けるときに用いるセファデックス系ゲルろ過剤の原料となる。また,加水分解して分子量約7万としたもの (デキストラン 70) の6%溶液,または分子量約4万としたもの (デキストラン 40) の 10%溶液は,血漿に近い粘稠度,コロイド浸透圧,比重をもち,薬理学的にはほとんど不活性であり,血中に比較的長くとどまるが,蓄積されずに排泄される。したがって,出血などの場合,血漿代用薬として用いられる。使用に際しては,抗原性のないことを確かめなければならない。

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