歩行を楽にするため,ズボンの裾を押さえ込み,足の甲から下脚部をひと続きにおおう西洋式の脚絆(きやはん)のこと。材質は厚手の布地や皮革で,丈は膝下が多いが,ナポレオン時代のものは股に達するものもある。脇をボタン,留金具,紐などで留め,下端に靴底を潜らせる革ベルトがつく。この形式をレギンズ,ロングスパッツともいう。多く軍服用として用いられたが,19~20世紀初めには一般にも着用され,甲を被う程度の短いスパッツが流行した。日本ではフランス式を伝習した幕府陸軍で最初に用い,明治の陸海軍は下士官兵用に白ズック製,士官用に黒ラシャおよび革製のものを定めていた。
小幅の長い布を足首から膝下まで巻き上げ,端につけた紐で結び留めるもので,しめ方が手加減でき脚に密着し,行軍のときにぐあいがよい。19世紀末,インド滞在のイギリス軍から始まり,日本陸軍は日露戦争中の1904年,編上靴(あみあげぐつ)の使用に伴って巻ゲートルを採用した。軍用語では巻脚絆という。一般にも普及し,労務者,警防団,教練の学生等の必需品となり,太平洋戦争後半期には通勤通学に男子は皆これをつけ,ゲートルといえば巻ゲートルをさすようになったが,敗戦とともになくなった。色はカーキ色,国防色,濃紺,黒で,布地はラシャその他のウール,綾木綿などであった。
執筆者:柳生 悦子
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西洋式の巻脚絆(まききゃはん)のこと。陸軍軍人が用いたものであるが、のちには青年団、登山家、土工などの作業場の監督者などが脚絆のかわりに用いた。その理由は、巻き方によって脚絆より自由で便利なためである。また、昭和初期、軍事教練が中学や大学で行われるようになって普及し、満州事変(1931~32)後は一般家庭にも普及、男子の生活必需品となった。ゲートルは黒木綿、紺木綿あるいはカーキ色の帯状の長い羅紗(らしゃ)製品で、一端を三角に折って留め、その頂点に同色の平紐(ひも)をつけて、脚の下部から巻いていき、膝(ひざ)関節の近くで平紐を2、3回巻いて、ずり落ちないように留めるのである。戦後は、一般大衆の間でもほとんど利用されていない。
[遠藤 武]
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