茶褐色系の色で,最初,軍服に使用された保護色。カーキkhakiは,元来ヒンディー語で〈ほこり〉とか〈ほこりっぽい〉の意。1848年に,インドのペシャーワルで偵察隊を組織したイギリス軍のラムスデン中尉は,部下に原地で染めた外衣を着せた。染料は矮性種(わいせいしゆ)のヤシからとったものとも,川の泥ともいわれたが,この色がその後各国の軍用衣服に採用された茶褐色の名称となった。アジアやアフリカの戦闘にも用いられ,敵の目から隠蔽しやすい効果を認めて,イギリス陸軍は98年にカナダを除く全海外領の陸軍に着せ,1902年全軍にこの色の軍服を規定した。その前後ドイツ,フランスは植民地軍の,アメリカは全軍の軍服の色とした。旧日本陸軍も04年日露戦争開始直後,勅令で〈夏衣夏袴を茶褐色と為すことを得〉と定め,翌年制定の陸軍戦時服制ではカーキ色を主色としたが,20年に帯青茶褐色と色調を改めた。日中戦争以来,緑がかったカーキ色は国防色と呼ばれて公私の制服に用いられた。
執筆者:太田 臨一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…普及とともに紺色・ホック留めの海軍士官略装型の学生服も出現したが,いずれにせよ集団規律,職務への服従,地方民とは異なる選良性などの点で,軍服がモデルとして選びとられたのであった。日露戦争後,陸軍軍服は国防色(カーキ色)へと変わるが,学生服は一貫して当初の色・型を継承し続けた。 女生徒の場合は,和服に表現される貞淑,従順など婦徳への拘泥から,洋服の採用が男子に比して著しく遅れた。…
… 各国の正規の軍隊の軍服は,戦闘用と儀礼用に大別される。戦闘用は機能的で実用本位に作られており,とくに陸軍の戦闘服では作戦地域の環境にあう保護色を重視してカーキ色やオリーブ・ダーク色が採用されている。儀礼用には通常着用する制服と儀礼服があり,儀礼服は伝統的なものが多い。…
※「カーキ色」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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