コスモポリタニズム(読み)こすもぽりたにずむ(英語表記)cosmopolitanism

日本大百科全書(ニッポニカ) 「コスモポリタニズム」の意味・わかりやすい解説

コスモポリタニズム
こすもぽりたにずむ
cosmopolitanism

世界主義、世界市民主義、四海同胞主義、万民主義、世界公民主義などと訳される。共同体、民族、国家などを媒介とせずに、諸個人が直接に世界と結合さるべきであるとする個人主義的にして普遍主義的な思想ギリシア語コスモス(世界)とポリテス(市民)を合成したコスモポリテスkosmopolitesに由来し、ポリス社会崩壊期の紀元前4世紀ギリシアで、シノペディオゲネスが自らをコスモポリテス(世界を故国とする者)と名のり、社会的慣習を無視した自主独立の生活を送ったことから、この姿勢がヘレニズムのストア派の思想に流入していったといわれる。神の摂理による宇宙国家により世俗的世界を秩序づける中世キリスト教や、世界国家を説くカントにもコスモポリタニズムの要素がみられる。狭い国家主義やナショナリズムを超える点で国際主義(インターナショナリズム)と共通するが、国家や民族を無視し媒介しない点で区別される。

[加藤哲郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「コスモポリタニズム」の意味・わかりやすい解説

コスモポリタニズム
cosmopolitanism

語源的にはギリシア語の kosmos (宇宙,世界) と politēs (市民) との合成語で,人類全体を一つの世界の市民とみなす立場をいう。日本では「世界市民主義」あるいは「世界主義」ともいう。このような考えはすでに古代ギリシアのキュニコス派にみられ,アレクサンドロス大王の世界制覇も,帝国主義的動機があったにしろ,部分的にはこの理念の実現を目指したものであった。神の前における人類の平等を説いたキリスト教が急速に伝播したのも,この理念ゆえである。近世ヒューマニズムやカントの人類共同体の理念もこの一例であり,平等,自由を掲げたフランス革命もこの理念と結びついていた。 19世紀以降,特にマルクス主義ではインターナショナリズムと区別され,伝統を無視したものと批判されている。 20世紀にみられる世界連邦主義はコスモポリタニズムの現代的形態である。

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