キュニコス派(読み)キュニコスは(英語表記)Kynikoi; Cynics

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「キュニコス派」の意味・わかりやすい解説

キュニコス派
キュニコスは
Kynikoi; Cynics

犬儒派ともいう。アンチステネスを祖とするギリシア哲学一派キュニコス派の名はアンチステネスが教鞭をとったキュノサルゲスの地名,あるいはシノペディオゲネスの行なったキュニコス・ビオス (犬のような生活) に由来するといわれている。アンチステネスが徳の理想をただ無欲にのみ認めたように,キュニコス派の人々は徳と哲学を尊重するとはしたものの,自然に従う生活のうちに完全な独立と無欲を得て,芸術や学問をはじめあらゆる特定の目的を放棄することに徳を見出した。忍耐と諦めの力によって到達されるこの哲学においては,もはや哲学的思考の豊かな展開は認められず,社会生活に対する嘲笑風刺がその本領であった。クラテス,ヒッパルキア,メトロクレス,ビオンらが出た前3世紀頃が盛んであり,以後は衰えたが,ローマ帝国が道徳的に堕落してきた1世紀頃に復活した。ルキアノスはこのキュニコス派の人々の乞食のような生活態度や無教養を批判した。

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