改訂新版 世界大百科事典 「コモチカナヘビ」の意味・わかりやすい解説
コモチカナヘビ
common lizard
viviparous lizard
Lacerta vivipara
カナヘビ科のトカゲ。南部を除くヨーロッパの大部分からシベリアを経てアムール地方,サハリンに至る広域に分布し,北海道北西部のサロベツ原野にも生息している。スカンジナビア半島では北極圏の北緯70°まで達し,爬虫類としてはもっとも寒冷の地域にまで分布している。これは輸卵管に卵をもった親が,暖かい場所を選択して移動するという卵胎生の利点により,従来生息が困難とされる寒い地方にも適応できたのであろう。全長16~18cm,尾はその1/2~2/3を占める。他のカナヘビ類に比べると体色は茶褐色でじみであり,わずかに幼体の腹面が明るいオレンジ色をしている。森林,ブッシュ,草原などの湿った場所にすみ,切株や岩の上で日光浴をする。交尾は4~5月ころ行われ,7~8月ころに平均5~8匹,多いものは10匹の子を数日かかって生む。南部の暖かい地方では山地にすみ,アルプスやバルカン山脈の2500~3000mの高所にも達している。分布の南限であるイベリア半島北部では卵生となる。
執筆者:松井 孝爾
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報