カナヘビ(読み)かなへび(英語表記)true lizard

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カナヘビ」の意味・わかりやすい解説

カナヘビ
かなへび
true lizard

広義には爬虫(はちゅう)綱有鱗目(ゆうりんもく)カナヘビ科に属するトカゲの総称で、狭義にはそのうちとくにカナヘビTakydromusコモチカナヘビLacertaなどに含まれるグループをさす。カナヘビの和名は「かな(金属)色をしたヘビ」を意味する。

 北海道から九州まで各地に分布し、庭先でも普通にみられるニホンカナヘビT. tachydromoidesは、カナヘビの典型的形態をした種で、全身が褐色で細長く、全長22センチメートル、尾はその3分の2ほどである。体鱗には隆起があってニホントカゲのような光沢がなく、尾もあ青くない。平地から低山地の草地、堤、やぶの周辺などにすみ、春から夏に2、3回産卵し、1回に平均4個ほどを産み、飼育下でもよく繁殖する。餌(えさ)は昆虫、クモミミズなどである。南西諸島には体色が美しい緑色のアオカナヘビT. smaragdinus(全長22センチメートル)と、カナヘビ属に近縁サキシマカナヘビApeltonotusのサキシマカナヘビA. dorsalis(全長30センチメートル)の2種が分布し、対馬(つしま)では、アムール川周辺から朝鮮半島に分布するアムールカナヘビT. amurensisの生息が最近になって判明した。北海道北部でも生息が確認されたコモチカナヘビL. viviparaは、卵胎生で全長18センチメートル、生息域の広い種で、シベリアからヨーロッパ中部にかけて分布し、アルプスの3000メートル地域やスカンジナビア半島の北極圏付近までも及ぶ。ヨーロッパ産のコモチカナヘビ属には大形種が含まれ、ホウセキカナヘビL. lepidaが全長80センチメートル、ミドリカナヘビL. viridisが45センチメートルに達する。また近縁のカベカナヘビ属Podarcisは全長20センチメートル前後、イベリアカベカナヘビP. hispanicaをはじめ美しい種が多い。カナヘビ科Lacertidaeは全部で約20属180種がヨーロッパ、アフリカ、アジアの大部分に分布し、頭部以外の体鱗には皮骨板がない。

[松井孝爾]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カナヘビ」の意味・わかりやすい解説

カナヘビ
Takydromus tachydromoides

トカゲ目カナヘビ科。全長約 20cm。体は細長く,特に尾は長く全長の3分の2を占める。体色は黄褐色ないし暗褐色で,背面には鱗が拡大してできた6列の縦条がある。5~9月に産卵し,この期間中交尾が繰返される。雌は普通2回,多いものでは6回産卵する。1回あたりの産卵個数は1~8個で,卵は 40日ぐらいで孵化する。孵化したばかりの幼体は 6.5cmほどで,1年ぐらいで両性とも成熟する。日本固有種で,北海道から九州まで分布し,草むらや地上に普通にみられる。昆虫類,クモなどを捕食する。なおカナヘビ科 Lacertidaeはマダガスカル島を除く旧世界 (ヨーロッパ,アフリカ,アジア) に 150種ほどが分布しているが,すべて地上性で,形態的な分化が比較的少く,肢が退化する傾向にあるものはまったくない。日本には本種のほかにコモチカナヘビ,アオカナヘビ,サキシマカナヘビなどがいる。

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