コンピューターウイルス(読み)こんぴゅーたーういるす(その他表記)Computer virus

デジタル大辞泉 「コンピューターウイルス」の意味・読み・例文・類語

コンピューター‐ウイルス(computer virus)

コンピューターで、電子メールや他人から渡されたデータファイルなどを介して、他のシステムに入りこむプログラム。自己増殖したり、格納してあるファイルを破壊したりするところから、ウイルスになぞらえていう。対抗するアプリケーションソフトウイルス対策ソフトと呼ぶ。

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知恵蔵 「コンピューターウイルス」の解説

コンピューターウイルス

マルウエアの一種。一般には、マルウエアの語義である「意図せずシステムに入り込み悪事を働くソフト」の総称として「コンピューターウイルス」の語が用いられることも多い。これは、「マルウエア」という語がIT(情報通信)分野に詳しい人々の間でしか認知されておらず、一般には定着していないため。そもそも一般には下記に示すようなコンピューターウイルスの定義や他のマルウエアの存在、区別が周知されておらず、マルウエアの意味でコンピューターウイルスの語を使うことを誤用とは言えない。
本来の意味での「コンピューターウイルス」とは、単独のファイルとしては存在せず、パソコンの既存のプログラムやデータファイルを書き換えることで「感染」し、平時は存在に気づかせることなく「潜伏」、同一システム内のプログラムやデータファイルに自らのコピーを追加して「増殖」、特定の日時や操作によって感染先のプログラムから制御を奪って動作を開始し「発症」という4つの特性を持つプログラムのことを指す。これらの特性が自然界のウイルスの行為に酷似していることから名付けられた。
2000年の通産省(現在の経産省)告示「コンピュータウイルス対策基準」では、コンピューターウイルスを次のように定義している。
第三者のプログラムやデータベースに対して意図的に何らかの被害を及ぼすように作られたプログラムであり、 次の機能を一つ以上有するもの。
(1)自己伝染機能:自らの機能によって他のプログラムに自らをコピーし又はシステム機能を利用して自らを他のシステムにコピーすることにより、他のシステムに伝染する機能
(2)潜伏機能:発病するための特定時刻、一定時間、処理回数等の条件を記憶させて、発病するまで症状を出さない機能
(3)発病機能:プログラム、データ等のファイルの破壊を行ったり、設計者の意図しない動作をする等の機能」
コンピューターウイルスの存在は1980年代から確認されている。開発されるようになったきっかけは、ハッカーが自分の技術力を誇示するためだったと言われる。そのことを示すように、当初のウイルスは「発症」時に特別なメッセージを表示するだけなど、愉快犯的な動作をするものが主だった。それが次第にデータの破壊といった、明確な悪意を持った動作をするようになったが、これも「発症」のアピールが徐々に過激化したものだと考えられる。近年では、感染したパソコンのファイルを暗号化してしまうプログラムを利用して、解読用ソフトの提供に金銭を要求する「ランサムウエア」なども登場している。
ウイルスの感染経路にも時代による変化が見られる。80~90年代前半まではフロッピーディスクCD-ROMなどの記録媒体が主な感染経路だったが、90年代中盤以降のインターネットブロードバンドの普及によって電子メールの添付ファイルなどネット経由による感染が拡大した。特に、記録媒体による感染は範囲(規模)や量が限定的だったのに対して、ネット経由の感染は短期間に世界規模での感染を可能にし、感染リスクを増大させた。
ウイルス作成の目的や感染経路の変化は、ウイルスの構造も変化させている。他のファイルへの「感染」機能をなくして独立した実行ファイルとして作られるものが増え、その結果、「感染」の意味も「実行ファイルを他のコンピューターや記録装置へのコピー」することを指すようになった。被害の範囲を拡大させるため、自らの存在に気づかせるような画面表示を行うものはほとんどなくなっている。トロイの木馬やワームといった、本来は狭義のコンピューターウイルスと区別されているマルウエアの性格も持つようになったのである。

(斎藤幾郎 ライター / 2009年)


コンピューター・ウイルス

一般語としてのコンピューター・ウイルスは、利用者が意図しないのにパソコンに保存され、実行するとファイル削除やデータ盗難などの破壊行為が行われるプログラム。厳密には、そうしたプログラムのうち、自然下に存在するウイルスのように、感染、潜伏、発症といった動作を行うものを指す。具体的には、単独のファイルとしては存在せず、他のプログラムやデータファイルと一体化する(感染)、そのファイルが実行されるなどした際に動作を開始し、利用者に気づかれぬよう他のファイルにコピーを一体化させる(潜伏)、その後、開発者の設定した日時やタイミングなどをきっかけに破壊行為を行う(発症)といった動作。いずれも目的を持って作成されたものであり、自然発生したものではない。

(斎藤幾郎 ライター / 西田宗千佳 フリージャーナリスト / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

百科事典マイペディア 「コンピューターウイルス」の意味・わかりやすい解説

コンピューターウイルス

ソフトウェアを破壊するプログラムのこと。パソコン通信インターネットなどを通ってコンピューターに侵入する。コンピューター自体は破壊されないが,正常なプログラムが破壊されることが多い。この対策として,ウイルスの侵入をチェックし消去するコンピューターワクチンというプログラムが開発されている。→コンピューター関連犯罪サイバー犯罪ハッカー
→関連項目サイバー攻撃

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ASCII.jpデジタル用語辞典 「コンピューターウイルス」の解説

コンピューターウイルス

コンピューターやソフトウェアに侵入して、データの破壊や改ざんなどの悪さをするプログラム。ネットワークやリムーバブル・メディアなど、あらゆる経路から感染し、アプリケーションなどに寄生して、コンピューターの正常な動作を妨害する。感染してから、異常が発生するまでの潜伏期間があることや、ほかのプログラムに感染して増殖を繰り返す性質が本物のウイルスと似ていることからこの名前が付いた。妨害の方法はプログラムによりさまざまで、たとえば、不愉快なメッセージを表示したり、音楽を再生する、という比較的深刻ではないものから、システムを破壊してしまう悪質なものまで存在する。最近は、電子メールやインターネットなどを介して侵入し、自己複製しながら破壊活動するプログラムのワームによる被害が増えている。ウイルスやワームなどの悪意のあるソフトウェアを総称して、マルウェアという。こうしたマルウェアからシステムを守るため、アンチウイルス(ワクチン)というプログラムを使用して、悪意のあるプログラムの予防や発見、駆除する。アンチウイルスのほか、プライバシー保護や迷惑メール対策などの機能を加えた、総合的なセキュリティー対策ソフトも販売されている。

コンピューターウィルス

正常なシステムの動作を妨害する目的で作成されたコンピュータープログラムの一種。多くのコンピューターウィルスは、ネットワーク上の実行形式ファイルなどに「寄生」し、宿主プログラムの実行と同時にOSのカーネルなどに自らを組み込み、システムの正常動作を妨害する。妨害の方法はプログラムによりさまざまで、たとえば、12月25日になると「Merry Christmas」とメッセージを表示するという比較的深刻ではないものから、システムを破壊してしまう悪質なものまで存在する。コンピューターウィルスは、いわゆるハッカーが、プログラマとしての自分の能力を誇示するために作成されることが多い。

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IT用語がわかる辞典 「コンピューターウイルス」の解説

コンピューターウイルス【computer virus】

コンピューターに被害を与える不正プログラムの総称。他のコンピューターに自らの複製をコピーする「自己伝染機能」、ある一定期間が経過するなどの特定の条件が満たされたときに作動する「潜伏機能」、プログラムやデータを破壊したり、コンピューターに不具合を起こさせたりする「発病機能」のうち、ひとつ以上の機能を有するもの。◇略して「ウイルス」ともいう。

出典 講談社IT用語がわかる辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のコンピューターウイルスの言及

【情報セキュリティ】より

…そのような状況に置かれているコンピューターは,不正アクセスのターゲットとなる危険性を伴っている。また,外部との情報交換によりコンピューターウイルスのような不正なプログラムをコンピューター内に取り込んでしまう危険性もある。それ以外にも,コンピューター間で通信を行っている途中の情報を改竄されたり,あるいは〈なりすまし〉によってニセの情報を送られるといった危険性もある。…

【人工生命】より

…たとえば,知的な行動をするロボットがすでに実在し,これに動物の皮を被せると,本当の動物と区別がつかない。コンピューターウイルスには,生物のウイルスのように宿主に感染し増殖し,進化するものまで出現した。 自然界を観察すると,機能のレベルに応じて,複雑な階層構造をしていることがわかる。…

※「コンピューターウイルス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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