ゴンド族(読み)ゴンドぞく(その他表記)Gond

改訂新版 世界大百科事典 「ゴンド族」の意味・わかりやすい解説

ゴンド族 (ゴンドぞく)
Gond

インド最大の原住民部族であり,デカン高原中部から北部にかけての広大な地域に住む。人口は300万とも400万ともいわれている。プロト・オーストラロイドないしベッディード人種型の特徴を示し,使用言語のゴーンディ語Gōṇḍiは南インドのドラビダ語系統に属する。全体的にいえば農耕生活,父系血縁関係を軸とする政治・社会組織,地母神・村落守護神信仰,若者宿組織などの文化要素によって特徴づけられるが,その具体的内容には少なからぬ地域差がみられる。バスタル地方のマリア・ゴンド族のように単純な焼畑耕作に依存する移動性の強いグループから,アディラバード地方のラジ・ゴンド族のように定着農耕を営みヒンドゥー農民とほとんど同じ生活を送っているグループまでいろいろである。このような地域差を大きな人口や広大な居住地などと考え合わせれば,ゴンド族全体が単一の部族であったかどうかは疑わしく,共通語のゴーンディ語も南インドのドラビダ文化の強い影響下に普及したものである可能性も否定できない。

 現在これらグループの間にはヒンドゥー教徒のカースト制度に類似した相互関係が形成されており,通婚するかしないか,水や食物を受け取るか受け取らないかによって,互いの序列的位置が表現される。このような序列関係の頂点に立つのはラジ・ゴンド族である。彼らはかつて首長国を形成していたといわれ,現在でも地方の政治的プロセスに関してはリーダーの地位を占めている。ヒンドゥーのクシャトリヤ(王侯・貴族)カーストの出であると主張し,他のゴンド族グループや原住民部族だけでなく,バラモン以外のヒンドゥー・カーストさえも,ラジ・ゴンド族から水やときには食物さえも受け取り,その優位を認めている。諸グループ間のこのような上下関係の形成は,原住民部族がヒンドゥー社会に関係づけられてゆく共通のパターンを示すが,同時にカースト制度自体の成立事情を考えるうえで示唆するところが多い。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ゴンド族」の意味・わかりやすい解説

ゴンド族
ゴンドぞく
Gond

インド中部の先住民で,指定部族の一つ。かつてはインド中央部のゴンドワナ (ゴンド族の国) と呼ばれた広大な地域に居住した。形質的にはプロト=オーストラロイドないしはベッドイドに属し,言語的にはドラビダ語族に分類される。多く集団分れ,文化的にはかなり地域差がある。焼畑耕作を営み,父系的氏族組織をもち,トーテミズムの信仰がみられる。

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世界大百科事典(旧版)内のゴンド族の言及

【入墨∥刺青】より

…入墨はまた,超自然的力を発揮する。インドのゴンド族は強い力の持主とされる猿神ハヌマンの像を腕に彫って,それにあやかろうとした。ビルマ女性は両眼の間や唇,舌などに施す三角形の入墨が,男性を魅了する不思議な力を持つと信じた。…

※「ゴンド族」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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