指定部族(読み)していぶぞく

百科事典マイペディア 「指定部族」の意味・わかりやすい解説

指定部族【していぶぞく】

インド憲法第342条に基づき,大統領令で指定された部族集団総称。英語でScheduled Tribes。文化的独自性,社会経済的後進性,隔絶度の高い居住が一応の基準とされる。憲法では指定カーストとともに〈後進諸階級〉を構成し,同じく優遇措置が実施される(留保制度)。総人口の8%(1991年)を占め,居住地は北東部山岳地域(ナガ系諸民族,ミゾなど)・東部と中部の山岳地域(サンタルムンダゴンドなど)・南部(トダなど)など全国各地に広がる。各部族は人種・人口規模・生業・一般の住民社会との関係・文化的融合度などにおいて多様だが,非インド・アーリヤ系の少数民族が多い。その社会経済的状態は,指定カーストに較べても遅れている。さらに近年は,文化的アイデンティティや伝統的生業の基盤となる土地喪失も続く。この状況に大規模部族を中心として,政治的自治権や文化的アイデンティティの再構築運動が展開されている。
→関連項目ボド

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「指定部族」の解説

指定部族(していぶぞく)
scheduled tribe

インドにおける少数民族集団の行政上の範疇インド憲法での用語だが,部族という分類範疇が用いられたのは植民地支配下に始まる。憲法にもとづき当範疇に該当する集団が州ごとにリスト化されている。インド憲法は指定部族に対して平等な権利保証と優遇措置を定めており,指定カーストとほぼ同様の優遇政策が実施されている。自治権要求運動が各所であり,2000年にはジャールカンド州が設立された。1991年の指定部族の人口は6775万(総人口の8.08%)。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「指定部族」の意味・わかりやすい解説

指定部族
していぶぞく
Scheduled tribe

インドにおいてイギリス統治時代以降に少数民族集団を認定,保護するために定められた行政用語。インド憲法により,500以上の指定部族,約 5000万人が認定されており,人口に比例して議席などが割当てられる。中部と北東部の山岳地帯を中心として,全インドに分布するが,北インド平原部やインド半島部では少い。おもな民族集団はゴンド族ビール族コンド族サンタール族などである。

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世界大百科事典(旧版)内の指定部族の言及

【インド[国]】より


[大きな国内格差の存在]
 インド憲法には後進諸階級backward classesおよびこれに類似のさまざまな表現がある。その意味するところは今も議論の対象となっているが,本来の後進諸階級が指定カーストScheduled Castesと指定部族Scheduled Tribesを指すものであることには見解の差はない。指定カーストとはヒンドゥー教徒とシク教徒の中のいわゆる不可触民のことで,英語が複数形になっているのは州ごとにそのジャーティ(サブ・カースト)のリストがあるからである。…

※「指定部族」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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