日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゴールデンワイザー」の意味・わかりやすい解説
ゴールデンワイザー
ごーるでんわいざー
Alexander A. Goldenweiser
(1880―1940)
アメリカの人類学者。ボアズ門下の一人で、ボアズの実証的な伝播(でんぱ)研究を継承し、J・G・フレーザーらの進化主義的研究を批判した。その文化概念においては、同じボアズ門下のクローバーらが唱える文化=超有機体説と、サピア、R・H・ローウィらの心理的実在説とを、調和統合すべきであると説いた。北アメリカの先住民集団イロコイの社会の調査を行ったが、彼の著作にあってはむしろ理論的な関心が優越している。彼の主著の一つ『トーテミズム――分析的研究』(1910)において、彼は、異なる部族文化に共通してみられる心理学的要因に着目しつつも、結論として、トーテム信仰なる独自の現象は存在しないとした。この結論はレビ・ストロースによっても高く評価されている。また彼は、異なる文化にみられる、起源を異にし、また伝播にもよらない、類似した制度の説明として、文化的現象がとりうる変異には論理的に限りがあるという、限定された可能性の原理principle of limited possibilitiesを定式化した。
[濱本 満 2018年11月19日]