改訂新版 世界大百科事典 の解説
サイイド・ムハンマドの反乱 (サイイドムハンマドのはんらん)
アフリカ東部のソマリアで1899年から21年間も続いた民族主義的反乱。指導者サイイド・ムハンマドSayyid Muḥammad(1864ころ-1920)はサリヒーヤ団というイスラム教団の指導者で,イギリス植民地主義者によりイスラムが壊滅の危機に瀕しているとの宗教的危機感を人々に訴え,部族の枠を越えた民族的反乱をイギリス領ソマリアを中心に展開した。1899年にイギリス総督に宣戦を布告,1900-02年にはイギリスが南アフリカのボーア戦争に手こずっているのに乗じて攻勢に出た。イギリスはイタリア,エチオピアの協力を得て鎮圧に当たり,一時は和平が成立したが,08年には戦闘が再開された。第1次大戦中はドイツ・トルコ連合の支援を受けてゲリラ戦が展開されたが,イギリスは大戦後すぐに空軍をも動員して反乱の根拠地タレに総攻撃をかけた。イギリス側から〈気狂いムラー〉と恐れられたサイイド・ムハンマドの病死による士気の低下もあり,反乱は20年に終結した。
執筆者:岡倉 登志
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報