改訂新版 世界大百科事典 「サジラン」の意味・わかりやすい解説
サジラン
Loxogramme dulouxii Christ
ウラボシ科の着生常緑多年生シダ植物。単葉でへら形の葉形から,この名がある。根茎は細く,やや長くはい,まばらに葉を出す。葉身は倒披針形で,長さ15~40cm,先端は漸尖する。葉面の下部は中肋に流れ,葉柄はごく短く,黒褐色に色づく。基部に淡灰色の鱗片がある。葉はやや厚く,革質に近くて,葉脈は表面では見えないが,網状に結合し,まばらに遊離脈が含まれる。胞子囊群は線形で,中肋と15~25度の鋭角でつく。包膜はない。関東以西の深山の樹幹や岩上に見られ,石灰岩地にも多い。ヒマラヤから中国に分布し,台湾にもよく似たものがある。近似種にイワヤナギシダL.salicifolia Makinoがあるが,より暖地・低地性で,胞子囊群はより鋭い角度でつき,葉柄は淡緑色,基部の鱗片は淡褐色などの相違点で容易に区別できる。サジラン属Loxogrammeは約40種が旧世界の熱帯から暖帯に分布し,ただ1種がメキシコと熱帯アメリカに隔離分布している。
執筆者:光田 重幸
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報